3楼 エルの楽园〔→ side：Ｅ→〕
4楼 Ark
5楼 エルの絵本【魔女とラフレンツェ】
6楼 Baroque
7楼 エルの肖像
8楼 Yield
9楼 エルの天秤
10楼 Sacrifice
11楼 エルの絵本【笛吹き男とパレード】
12楼 Stardust
13楼 エルの楽园〔→ side：Ａ→〕


エルの絵本【魔女とラフレンツェ】
如何(いか)にして楽园(らくえん)の扉(とびら)は开(ひら）かれたのか…
郁苍(うっそう)と茂(しげ）る暗绿(あんりょく)の树々(きぎ)　不気味(ぶきみ)な鸟(とり)の鸣(な)き声（ごえ)
ある人里(ひとざと)离(はな）れた森(もり)に　その赤(あか)ん坊(ぼう)は舍(す）てられていた
幸(こう)か…不幸(ふこう)か…人目(ひとめ)を惮(はばか）るように舍(す）てられていたその子(こ)を拾(ひろ）ったのは
王国(おうこく)を追(お）われた只眼(せきがん)の魔女(まじょ)　《深红の魔女と讴われた》(Crimsonの)オルドローズ
银色(ぎんいろ)の髪(かみ)に　绯色(ひいろ)の瞳(ひとみ)　雪(ゆき)のように白(しろ）い肌(はだ)
拾(ひろ）われた赤(あか）ん坊（ぼう)は　いつしか背筋(せすじ)が冻(こお）る程(ほど)美(うつく）しい娘(むすめ)へと育(そだ）った…
流転(るてん)こそ万物(ばんぶつ)の基本(きほん)　流(なが）れる以上(いじょう)时(とき)もまた然(しか）り
二(ふた）つの楽园(らくえん)を巡(めぐ）る物语(ものがたり)は　人知(ひとし）れず幕(まく)を开（あ）ける…
「ラフレンツェ（らふれんつぇ）や…忘（わす）れてはいけないよ…」
银色(ぎんいろ)の髪(かみ)を风(かぜ)になびかせて　祈(いの）るラフレンツェ（らふれんつぇ）　死者(ししゃ)の为(ため)に…
小(ちい）さな唇(くちびる)が奏(かな）でる镇魂歌(Requiem)（れくいむ）　歌(うたえラフレンツェ（らふれんつぇ）　永远(とわ)に响(ひび）け…
时(とき)を喰(く）らう大蛇(Serpens)（せるぺんず）　灼(や)けた锁(くさり)の追想曲(Canon)(かのん)
狂(くる）い咲(さ）いた曼珠沙华(Lycoris)（りこいす）　还(かえ）れない楽园(Elysion)（えりしおん）
蝋烛(ろうそく)が消(き)えれば　渡(わた)れない川(かわ)がある
始(はじ)まりも忘(わす)れて　终(おわ)らない虚空(空)(そら)を抱(だ）く……
Creature's voice(＝亡者どもの声)
「——オノレラフレンツェ（おのれらふれんつぇ）」…悲痛(ひつう)な叫(さけ）びの不协和音(Harmony)（あふもに）
Un-satisfied(＝尽きせぬ渇望)
「——ニクキラフレンツェ(にくきらふれんつぇ)」…呪怨(じゅおん)の焔(ほのお)は燃(も)ゆる
儚(はかな)い幻想(げんそう)と知(し)りながら　生者(せいじゃ)は彼岸(ひがん)に楽园(らくえん)を求(もと)め
死者(ししゃ)もまた　还(かえ)れざる彼岸(ひがん)に楽园(らくえん)を求(もと)める
彼等(かれら)を别(わか）つ流(なが）れ　深(ふか）く冷(つめ）たい冥府(めいふ)の川(かわ)
乙女(おとめ)の流(なが）す涙(なみだ)は　永远(えいえん)に尽(つ）きることなく
唯(ただ)…叹(なげ）きの川(かわ)の水嵩(みずかさ)を増(ま）すばかり…
——少女(しょうじょ)を悪梦(あくむ)から呼(よ）び醒（さ）ます　美(うつく）しき竖琴(たてごと)の调(しら）べ
哀(かな）しい瞳(め)をした弾(ひ）き手（て)　丽(うるわ）しきその青年(せいねん)の名(な)は……
「ラフレンツェ（らふれんつぇ）や…忘(わす）れてはいけないよ…
お前(まえ)は冥府(めいふ)に巣喰(すく）う　亡者(もうじゃ)どもの手(て)から
この世界(せかい)を守(まも）る为(ため)の　最后(さいご)の黄泉(よみ)の番人(ばんにん)
纯洁(じゅんけつ)の结界(けっかい)を、破(やぶ）らせてはいけないよ…」
祖母(そぼ)が居(い)なくなって　唇(くちびる)を闭(と）ざした
吹（ふ）き抜（ぬ）ける风(かぜ)　寂(さび）しさ孤独(こどく)と知(し）った
彼(かれ)が访(おとず）れて　唇(くちびる)を开(ひら）いた
嬉(うれ）しくなって　誓（ちか）いも忘(わす）れていった…
——それは
手(て)と手(て)が触（ふ）れ合（あ）った　瞬间(しゅんかん)の魔法(まほう)
高鸣(たかな）る鼓动(こどう)　小(ちい）さな银铃(Bell)（べる）を鸣(な)らす
瞳(め)と瞳(め)见(み)つめ合(あ)った　瞬间(しゅんかん)の魔法(まほう)
禁断(きんだん)の焔(ほのお)　少女(しょうじょ)は恋(こい)を知(し)った…
一(ひと)つ夺(うば)えば十(じゅう)が欲(ほ)しくなり　十(じゅう)を夺(うば)えば百(ひゃく)が欲(ほ)しくなる
その焔(ほのお)は彼(かれ)の全(すべ)てを　灼(や)き尽(つ)くすまで消(き）えはしない…
「ラフレンツェ（らふれんつぇ）や…忘(わす）れてはいけないよ…」
爱欲(あいよく)に咽(むせ）ぶラフレンツェ（らふれんつぇ）　纯洁(じゅんけつ)の花(はな)を散(ち）らして
爱憎(あいぞう)も知(し）らぬラフレンツェ（らふれんつぇ）　漆黒(しっこく)の焔(ほのお)を抱(だ）いて
彼(かれ)は手探(てさぐ）りで暗(やみ)に繋(つな）がれた　獣(けもの)の槛(おり)を外(はず）して
少女(しょうじょ)の胎内(なか)に繋(つな）がれた　冥府(めいふ)の底(そこ)へ堕(お）りてゆく……
——近(ちか）づいてくる足音(あしおと)
やがて彼(Orpheus)が乙女(Eurydice)の手(て)を引(ひ）いて　暗暗(くらやみ)の阶段(かいだん)を駆（か）け上（あ）って来（く）る
けれど少女(しょうじょ)は裏切(うらぎ)りの代偿(だいしょう)として　残酷(ざんこく)な呪(のろ)いを歌(うた)った
呜呼…もう直(す)ぐ彼(かれ)は…彼(かれ)は振(ふ)り返(かえ)ってしまうだろう——
魔女(まじょ)がラフレンツェ（らふれんつぇ）を生(う）んだのか…ラフレンツェ（らふれんつぇ）が魔女(まじょ)を生(う）んだのか…
物语(ものがたり)はページ（ぺーじ）の外侧(そとがわ）に…
斯(か）くして…楽园(らくえん)の扉(とびら)は开(ひら）かれた


Baroque
「彼女(かのじょ)こそ…私(わたし)のエリスなのだろうか…」
主(しゅ)よ、私(わたし)は人间(ひと)を杀(あや）めました。
私(わたし)は、この手(て)で大切(たいせつ)な女性（人）(ひと)を杀(あや）め)ました。
思(おも）えば私(わたし)は、幼(おさな）い时分(じぶん)より酷(ひど）く臆病(おくびょう)な性格(せいかく)でした。
他人(たにん)というものが、私(わたし)には何(なん)だかとても恐(おそ）ろしく思(おも）えたのです。
私(わたし)が认识(にんしき)している世界(せかい)と、他人(たにん)が认识(にんしき)している世界(せかい)。
私(わたし)が感(かん）じている感覚(かんかく)と、他人(たにん)が感(かん）じている感覚(かんかく)。
『违う』(ちがう)ということは、私(わたし)にとって耐（た）え难（がた）い恐怖(きょうふ)でした。
それがいづれ『拒绝』(きょぜつ)に繋(つな）がるということを、无意识(むいしき)の内(うち)に知(し）っていたからです。
楽(たの）しそうな会话(かいわ)の轮(わ)にさえ、加(くわ）わることは恐(おそ）ろしく思(おも）えました。
私(わたし)には判(わか）らなかったのです、他人(たにん)に合(あ）わせる为(ため)の笑(わら）い方（かた)が。
いっそ空気(くうき)になれたら素敌(すてき)なのにと、いつも口(くち)を闭(と）ざしていました。
そんな私(わたし)に初(はじ）めて声(こえ)を挂(か）けてくれたのが、彼女(かのじょ)だったのです。
美(うつく）しい少女（人）(ひと)でした、优(やさ）しい少女（人）(ひと)でした。
月(つき)のように柔(やわ）らかな微笑(ほほえ）みが、印象的(いんしょうてき)な少女（人）(ひと)でした。
最初(さいしょ)こそ途惑(とまど）いはしましたが、私(わたし)はすぐに彼女(かのじょ)が好(す）きになりました。
私(わたし)は彼女(かのじょ)との长(なが）い交(まじ）わりの中(なか)から、多(おお）くを学(まな）びました。
『违う』(ちがう)ということは『个性』(こせい)であり、『他人』(たにん)という存在(そんざい)を『认める』(みとめる)ということ。
大切(たいせつ)なのは『同一(どういつ)であること』ではなく、お互(たが）いを『理解（りかい）し合（あ）うこと』なのだと。
しかし、ある一点(いってん)において、私(わたし)と彼女(かのじょ)は『违い过ぎて』(ちがいすぎて)いたのです。
狂(くる）おしい爱欲(あいよく)の焔(ほのお)が、身(み)を灼(や）く苦(くる）しみを知(し）りました。
もう、自分(じぶん)ではどうする事(こと)も出来(でき)ない程(ほど)、私(わたし)は『彼女(かのじょ)を爱(あい）してしまっていた』のです。
私(わたし)は勇気(ゆうき)を振（ふ）り绞（しぼ）り、想(おも）いの全(すべ）てを告白(こくはく)しました。
しかし、私(わたし)の想(おも）いは彼女(かのじょ)に『拒绝』(きょぜつ)されてしまいました。
その时(とき)の彼女(かのじょ)の言叶(ことば)は、とても哀(かな）しいものでした。
その决定的(けっていてき)な『违い』(ちがい)は、到底(とうてい)『解（わか）り合（あ）えない』と知(し)りました。
そこから先(さき)の记忆(きおく)は、不思议(ふしぎ)と客観的(きゃくかんてき)なものでした。
泣(な)きながら逃(に)げてゆく彼女(かのじょ)を、私(わたし)が追(お)い駆(か)けていました。
縺(もつ)れ合(あ)うように石畳(いしだたみ)を転(ころ)がる、《性的倒错性歪曲》(Baroque)の乙女达(おとめたち)。
爱(あい)を呪(のろ)いながら、石段(いしだん)を転(ころ)がり落(お)ちてゆきました……。
この歪(いびつ)な心(こころ)は、この歪(いびつ)な贝壳(かいがら)は、
私(わたし)の红(あか）い真珠(しんじゅ)は歪(ひず）んでいるのでしょうか？
谁(だれ)も赦(ゆる）しが欲(ほ）しくて告白(こくはく)している訳(わけ)ではないのです。
この罪(つみ)こそが、私(わたし)と彼女(かのじょ)を繋(つな）ぐ绊(きずな)なのですから。
この罪(つみ)だけは、神(かみ)にさえも赦(ゆる）させはしない……。
「ならば私(わたし)が赦そう(ゆるそう)…」
歪んだ真珠の乙女、歪なる日に死す…(Baroque Vierge, Baroque zi le fine...)
——激(はげ）しい雷鸣(らいめい)　浮(う）かび上（あ）がる人影(ひとかげ)
いつの间(ま)にか祭坛(さいだん)の奥(おく)には『仮面の男』(かめんのおとこ)が立(た）っていた——
歪んだ真珠の乙女、歪なる日に死す…(Baroque Vierge, Baroque zi le fine...)


エルの肖像
白(しろ）い结晶(けっしょう)の宝石(ほうせき)は　风(かぜ)を缠(まと）って踊(おど）
树氷(じゅひょう)の円舞曲(えんぶきょく)　远(とお）朽(く）ちた楽园(らくえん)
黒(くろ）い瞳孔(め)の少年(しょうねん)は　风(かぜ)を扫(はら）って通(とお）る
树氷(じょひょう)の并木道(なみきみち)　深(ふか）い森(もり)の廃屋(はいおく)
少年(しょうねん)が见(み）つけた 少女(しょうじょ)の肖像画(しょうぞうが)
『彼』(かれ)は病的(びょうてき)に白(しろ）い 『彼女』(かのじょ)に恋(こい)をしてしまった…
幼(おさな）い笔迹(ひっせき)の署名〈Sign〉（さいん）　妙(みょう)に歪(いびつ)な题名〈Title〉（たいとる）は
【最爱(さいあい)の娘(むすめ)エリス（えりす）の八(や）つの诞生日(たんじょうび)に…】
退廃(Decadence)へと至(いた)る幻想(げんそう)　背徳(はいとく)を纺(つむ)ぎ続(つづ)ける恋物语(Romance)
痛(いた)みを抱(だ)く为(ため)に生(う)まれてくる　哀(かな)しみ
第四(だいよ)の地平线(ちへいせん)—その楽园(らくえん)の名(な)は『ELYSION』
——そして…几度目(いくどめ)かの楽园(らくえん)の扉(とびら)が开(ひら）かれる……
やがて少年(しょうねん)は彼(かれ)の《理想》〈idea"L"〉（える）を求(もと）めるだろう…
やがて少年(しょうねん)は彼(かれ)の《键穴》〈keyho"L"e〉（える）を见(み）つけるだろう…
やがて少年(しょうねん)は彼(かれ)の《楽园》〈e"L"ysion〉（える）を求(もと）めるだろう…
やがて少年(しょうねん)は彼(かれ)の《少女》〈gir"L"〉（える）を见(み）つけるだろう…
娘(むすめ)もまた母(はは)になり　娘(むすめ)を产(う）むのならば
楽园(らくえん)を失(うしな）った原罪(つみ)を　永远(えいえん)に缲(く）り返（かえ）す……
始(はじ）まりの扉(とびら)と　终(お）わりの扉(とびら)の狭间(はざま)で
惹(ひか）れ合（あ）う『E』〈EL〉（える）と『A』〈ABYSS〉（あびす）——爱憎(あいぞう)の肖像(しょうぞう)
禁断(きんだん)に手(て)を染め(そめ)　几度(いくど)も恋(こい)に堕ちて(おちて)ゆく
求め合う(もとめあう)『E』〈EVA〉（えわ)と『A』〈ADAM〉（あだむ)——爱憎(あいぞう)の肖像(しょうぞう)
やがて少年(しょうねん)は♂〈オトコ〉（おとこ)の为(ため)に自(みずか）らを杀(ころ）し　少女(しょうじょ)は♀〈オンナ〉（おんな)の为(ため)に自(みずか）らを杀(ころ）す
时(とき)の荒野(こうや)を彷徨(さまよ）う罪人达(つみびとたち)は　其処(そこ)にどんな楽园(らくえん)を筑(きず）くのだろうか？
——几度(いくど)となく『E』(Elysion)が魅(み）せる幻影(げんえい)　それは失(うしな）ったはずの『E』(Eden)の面影(おもかげ)
呜呼…その美(うつく）しき不毛(ふもう)の世界(せかい)は　几(いく）つの幻想(げんそう)を疾(はし）らせてゆくのだろう——

Yield
「彼女(かのじょ)こそ…私(わたし)のエリス（えりす）なのだろうか…」
一人(ひとり)娘(むすめ)は　せっせと种(たね)を莳(ま）く
変(か）わらぬ过去(かこ)に　访(おとず）れぬ未来(みらい)に
不毛(ふもう)な行为(こうい)と　君(きみ)は笑(わら）うだろうか？
それなら君(きみ)は　幸(しあわ）せなんだろうね…
根雪(ねゆき)の下(した)で春(はる)を待(ま）つの　夏(なつ)が过(す）ぎれば実(みの）りの秋(あき)ね…
成果…収获…それは果実を产む(harvest harvest it yields fruits)
最も遅い収获…それは甘い果実を产む(la la, latest harvest it yields sweets)
一夜(ひとよ)限(かぎ）りの　情事(ゆめ)でも构(かま）わない
それをも女(おんな)は　永远(とわ)に出来(でき）るから
不毛(ふもう)な恋(こい)と　君(きみ)は笑(わら）うだろうか？
やっぱり君(きみ)は　幸せ(しあわ）せなんだろうね…
冻(こご）える夜(よる)は梦(ゆめ)を见(み）るの　夏(なつ)が过(す）ぎれば想(おも）いが実(みの）る…
结果…収获…それは果実を产む(harvest harvest it yields fruits)
最も遅い収获…それは甘い果実を产む(la la, latest harvest it yields sweets)
「3」(さん)…不安定(ふあんてい)な数字(すうじ)　「3-1」(さんひくいち)…模范的(もはんてき)な数式(すうしき)
问题(もんだい)となるのは个(こ)の性质(せいしつ)ではなく　唯(ただ)…记号(きごう)としての数量(すうりょう)
世界(せかい)が安定(あんてい)を求(もと）める以上(いじょう)　早(はや）くどれか一(ひと）つを引(ひ）かなければ…
何故(なぜ)人间(ひと)は恋(こい)をする　相応(ふさわ）しい季节(とき)に出会(であ）えないの？
呜呼…お父さん(Dad)…お母さん(Mam)
「——それでも私(わたし)は幸(しあわ）せになりたいのです……」
恋心　甘い果実　真っ赤な果実(Sweets, lala Sweets, lala 真（ま）っ赤（か）なFruits)
もぎ获(と）れないのなら　刈(か）り取（と）れば良(い）いと…
恋心　甘い果実　真っ赤な果実(Sweets, lala Sweets, lala 真（ま）っ赤（か）なFruits)
呜呼…でもそれは首(くび)じゃないか……
二人(ふたり)の♀〈オンナ〉（おんな）　一人(ひとり)の♂〈オトコ〉（おとこ）　一番(いちばん)不幸(ふこう)なのは谁(だれ)？
落(お）ちた果実(かじつ)…転(ころ）がる音(おと)　余剰(よじょう)な数字(すうじ)…引(ひ）かれる音(おと)
「3-1+1-2」(さんひくいちたすいちひく)
——最后(さいご)に现(あらわ）れたのは『仮面（かめん）の男（おとこ）』
彼等(かれら)が消(き）え去（さ）った后(のち)　荒野(こうや)に一人(ひとり)取(と）り残（のこ）されるのは谁(だれ)——

エルの天秤
杀人(さつじん)…窃盗(せっとう)…诱拐(ゆうかい)…密売(みつばい)…
——悪魔(あくま)に魂(たまし)を売(う)り渡(わた)すかのように　金(かね)になる事(こと)なら何(なん)でもやった
问(と)うべきは手段(しゅだん)では无(な)い　その男(おとこ)にとって目的(もくてき)こそが全(すべ)て
切実(せつじつ)な现実(げんじつ)　彼(かれ)には金(かね)が必要(ひつよう)だった…
倾(かたむ)き続(つづ)けてゆく天秤(てんびん)　その左(ひだり)皿(ざら)が沈(しず)み切(き)る前(まえ)に
力(ちから)づくでも浮(う)き上(あ)がらせるだけの金(かね)が　右(みぎ)皿(ざら)には必要(ひつよう)だった…
そして…その夜(よる)も天秤(てんびん)は仮面(かめん)を跃(おど)らせる……
暗(やみ)を缠(まと)うように　夜(よる)の静寂(しじま)を探(さぐ)り　瞳(め)と瞳(め)を见(み)つめ合(あ)って
梦想的〈Romantic〉（ろまんてぃく）な月(つき)灯(あか)りに　そっと唇(くちびる)重(かさ)ね　息(いき)を潜(ひそ)めた…
慌(あわただ)しく通(とお)り过(す)ぎる　追(お）っ手达（てたち)を遣(や)り过(す)ごし　手(て)と手(て)を取(と)り合(あ)って
戯曲的〈Dramatic〉（どらまてぃく）な逃避行(とうひこう)に　酔(よ)った二(ふた)つの人生(いのち)　爱(あい)に捧(ささ)げた…
さよなら…(権力(けんりょく)の走狗(そうく)どもには便利(べんり)なカード)
さよなら…(娘(むすめ)を売(う)れば至尊(しそん)への椅子(いす)は买(か)える)
身分(みぶん)违(ちが)いの恋(こい)　许(ゆる)されないと知(し)っても　♂(お)と♀(め)は惹(ひ)かれ合(あ)った
嗜虐的〈Sadistic〉（さおでぃすてぃく）な贵族(きぞく)主义(しゅぎ)を　蹴(け)って槛(おり)を抜(ぬ)け出(だ)す　呜呼(ああ)それは悲剧(ひげき)…
运命(うんめい)の游戯盘〈Board〉（ぼーど）の上(うえ)で　支配力(しはいりょく)を求(もと)めて　生(せい)と死(し)は夺(うば)い合(あ)った
彻底的〈Drastic〉（どらすてぃく）な追悼剧(ついとうげき)を　笑(わら)う事(こと)こそ人生(じんせい)　呜呼(ああ)むしろ喜剧(きげき)…
さよなら…(〈コイン〉（こいん）で雇(やと)った者(もの)が裏切(うらぎ)る世(よ)の中(なか))
さよなら…(他人(たにん)ならば不条理(ふじょうり)と责(せ)めるは惨(みじ)め)
楽园(らくえん)への旅路(たびじ)　自由(じゆう)への船出(ふなで)　逃走(とうそう)の果(は)てに辿(たど)りついた岸辺(きしべ)
船头(せんどう)に扮(ふん)した男(おとこ)が指(ゆび)を鸣(な)らすと　黒衣(こくい)の影(かげ)が船(ふね)を取(と)り囲(かこ)んだ……
「お帰(かえ)りの船赁(ふなちん)でしたらご心配(しんぱい)なく、既(すで)に充分(じゅうぶん)すぎるほど戴(いただ)いておりますので、けれども彼(かれ)は、ここでさよなら」
「残念(ざんねん)だったね…」
「娘(むすめ)さえ无事(ぶじ)に戻(もど)るならばそれで良(よ)い、使用人〈オトコ〉（おとこ）の方(ほう)など杀〈バラ〉（ばら）しても构(かま)わんわ」
一度(いちど)も眼(め)を合(あ)わせずに伯爵(はくしゃく)はそう言(い)った…　金货〈コイン〉（こいん）の诘(つ)まった袋(ふくろ)が机〈テーブル〉（てーぶる）叩(たた)いた…
いつも人间(ひと)は何(なに)も知(し)らない方(ほう)が幸福(しあわせ)だろうに
けれど他人(ひと)を求(もと)める限(かぎ)り全(すべ)てを知(し)りたがる
——何故(なぜ)破灭(はめつ)へと歩(あゆ)み出(だ)す？
华(はな)やかな婚礼(こんれい)　幸(しあわ)せな花嫁(はなよめ)　运命(うんめい)の女神(めがみ)はどんな脚本〈シナリオ〉（しなみお）を好(この)むのか…
虚饰(きょしょく)の婚礼(こんれい)　消(き)えた花嫁(はなよめ)　破灭(はめつ)の女神(めがみ)はどんな绽(ほころ)びも见逃(みのが)さない…
呜呼(ああ)…燃(も)えるように背中(せなか)が热(あつ)い　その男(おとこ)が伸(の)ばした手(て)の先(さき)には何(なに)かが刺(さ)さっていた
呜呼(ああ)…绯(あか)く染(そ)まった手(て)を见(み)つめながら　仮面(かめん)の男(おとこ)は缓(ゆる)やかに崩(くず)れ落(お)ちてゆく…
呜呼(ああ)…その背后(はいご)には娘(むすめ)が立(た)っていた　凄(すさ)まじい形相(ぎょうそう)で地(ち)に卧(ふ)せた男(おとこ)を凝视(ぎょうし)していた
呜呼(ああ)…一歩(いっぽ)后(あと)ずさり何(なに)か叫(さけ)びながら　深(ふか)まりゆく暗(やみ)の彼方(かなた)へと走(はし)り去(さ)ってゆく…
——徐々(じょじょ)に薄(うす)れゆく意识(いしき)の水底(みなそこ)で　锖(さび)付(つ)いた键(かぎ)を掴(つか)もうと足掻(あが)き続(つづ)ける
扉(とびら)は目(め)の前(まえ)にある　急(いそ)がなければ　もうすぐ　もうすぐ约束(やくそく)した娘(むすめ)の——

Sacrifice
「彼女(かのじょ)こそ…私(わたし)のエリスなのだろうか…」
(Sacrifice, Sacrifice, ah...Sacrifice, Sacrifice, ah...)
无邪気(むじゃき)な笑颜(えがお)が　爱(あい)らしい妹(いもうと)は
神(かみ)に爱(あい)されたから　生(う)まれつき幸福(しあわせ)だった
一人(ひとり)では何(なに)も　出来(でき)ない可爱(かわい)い天使(てんし)
谁(だれ)からも爱(あい)される　彼女(かのじょ)が妬(ねた)ましかった
器量(きりょう)の悪(わる)い私(わたし)を　怜(あわ)れみないでよ…
「——惨(みじ)めな思(おも)いにさせる、妹(あのこ)なんて死(し)んじゃえば良(い)いのに…」
(Sacrifice, Sacrifice, ah...Sacrifice, Sacrifice, ah...)
あくる日(ひ)妹(いもうと)は　高热(こうねつ)を出(だ)して寝込(ねこ)んだ
ごめんなさい神様(かみさま)　あの愿(ねが)いは嘘(うそ)なんです
忏悔(ざんげ)が届(とど)いたのか　やがて热(ねつ)は下(さ)がった
けれど今度(こんど)は母(はは)が　病(やまい)の渊(ふち)に倒(たお)れた
母(はは)が今际(いまわ)の时(とき)に遗(のこ)した言叶(ことば)は…
「——妹(あのこ)は他人(ひと)とは违(ちが)うから、お姉ちゃん(あなた)が助(たす)けてあげてね…」
(Sacrifice, Sacrifice, ah...Sacrifice, Sacrifice, ah...)
母(はは)が亡(な)くなって　暮(く)らしにも変化(へんか)が访(おとず)れ
生(い)きる为(ため)に私(わたし)は　朝(あさ)な夕(ゆう)な働(はたら)いた
村(むら)の男达(おとこたち)は　优(やさ)しくしてくれたけど
村(むら)の女达(おんなたち)は　次第(しだい)に冷(つめ)たくなっていった
贫(まず)しい暮(く)らしだったけど　温(ぬく)もりがあった…
「——肩(かた)を寄(よ)せ合(あ)い生(い)きてた、それなりに幸福(しあわせ)だった…」
それなのにどうして…こんな残酷(ざんこく)な仕打(しう)ちを…教(おし)えて神様(かみさま)！
妹(あのこ)が授(さず)かった子(こ)は　主(しゅ)が遣(つか)わし给(たま)うた　神(かみ)の御子(みこ)ではないのでしょうか？
——妹(いもうと)が子供(こども)を身篭(みご)もっていることが発覚(はっかく)した夜(よる)
村(むら)の男达(おとこたち)は互(たが)いに颜(かお)を见合(みあ)わせ口(くち)を噤(つぐ)んだ
重(おも)い静寂(せいじゃく)を引(ひ)き裂(さ)いたのは耳(みみ)を疑(うたが)うような派手(はで)な打音(だおん)
仕立屋(したてや)の若女将(わかおかみ)が妹(いもうと)の頬(ほお)を张(は)り飞(と)ばした音(おと)…
泥棒猫(どろぼうねこ)…可哀想(かわいそう)な子(こ)だと…世话(せわ)を焼(や)いて…恩知(おんし)らず…
——断片的(だんぺんてき)な记忆(きおく)…断罪的(だんざいてき)な骂声(ばせい)…
呜呼(ああ)…この女(ひと)は何(なに)を唤(おめ)いているんだろう？　気持(きも)ち悪(わる)い
ぐらりと世界(せかい)が揺(ゆ)れ　私(わたし)は弾(はじ)け飞(と)ぶように若女将(わかおかみ)に掴(つか)みかかっていた…
绯(あか)く染(そ)まった视界(しかい)　苦(にが)い土(つち)と锖(さ)びの味(あじ)　头上(ずじょう)を飞(と)び交(か)う口论(こうろん)　神父様(しんぷさま)の怒声(どせい)
纯洁(じゅんけつ)の…悪魔(あくま)の契(ちぎ)り…灾(わざわ)いの种(たね)…マリア様(さま)の…谁(だれ)もガブリエルを…火炙(ひあぶ)りだ
「呜呼(ああ)…悪魔(あくま)とはお前(まえ)达(たち)のことだ！」
——そして…妹(いもうと)は最后(さいご)に「ありがとう」と言(い)った…
心无(こころな)い言叶(ことば)　心无(こころな)い仕打(しう)ちが　どれ程(ほど)あの娘(こ)を伤付(きずつ)けただろう
それでも全(すべ)てを…优(やさ)しい娘(こ)だから…全(すべ)てを赦(ゆる)すのでしょうね…
「でも、私(わたし)は绝対(ぜったい)赦(ゆる)さないからね…」
「この世(よ)は所诠(しょせん)、楽园(らくえん)の代用品(だいようひん)でしかないのなら、罪深(つみぶか)きモノは全(すべ)て、等(ひと)しく灰(はい)に帰(かえ)るが良(い)い！」
——裸足(はだし)の娘(むすめ)　冻(こお)りつくような微笑(ほほえみ)を浮(う)かべ
揺(ゆ)らめく焔(ほのお)　その暗(やみ)の向(む)こうに『仮面(かめん)の男(おとこ)』を见(み)ていた——

『エルの絵本【笛吹き男とパレード】』 エルの絵本【笛吹き男とパレード】
そのパレードは何処(どこ)からやって来(き)たのだろうか…
呜呼(ああ)…そのパレードは何処(どこ)までも続(つづ)いてゆく…
「おぉ友(とも)よ！罪(つみ)も无(な)き囚人达(しゅうじんたち)よ、
我(われ)らはこの世界(せかい)という锁(くさり)から解(と)き放(はな)された。
来(く)る者(もの)は拒(こば)まないが、去(さ)る者(もの)は决(けっ)して赦(ゆる)さない。
黄昏(たそがれ)の葬列(そうれつ)…楽园(らくえん)パレードへようこそ！」
パレードは何処(どこ)までも続(つづ)いてゆく → 世界(せかい)の果(は)てを目指(めざ)して
先头(せんとう)で仮面(かめん)の男(おとこ)が笛(ふえ)を吹(ふ)く → 沈(しず)む夕阳(ゆうひ)に背(せ)を向(む)けて
パレードは何処(どこ)までも続(つづ)いてゆく → 世界(せかい)の果(は)てを目指(めざ)して
男(おとこ)の肩(かた)に座(すわ)った少女(しょうじょ)が歌(うた)う → その笛(ふえ)の音(ね)に合(あ)わせて
心(こころ)に深(ふか)い伤(きず)を负(お)った者(もの)にとって 抗(あらが)えない魔性(ましょう)の音(ね)…
「やぁ友(とも)よ！幸薄(さちうす)き隣人达(りんじんたち)よ、
我(われ)らはこの世界(せかい)という锁(くさり)から解(と)き放(はな)された。
来(く)る者(もの)は拒(こば)まないが、去(さ)る者(もの)は决(けっ)して赦(ゆる)さない。
仮(かり)初(そ)めの终焉(しゅうえん)…楽园(らくえん)パレードへようこそ！」
パレードは何処(どこ)までも続(つづ)いてゆく → 世界(せかい)の果(は)てを目指(めざ)して
燃(も)えるような红(あか)い髪(かみ)の女(おんな)が踊(おど)る → 沈(しず)む夕阳(ゆうひ)を背(せ)に受(う)けて
パレードは何処(どこ)までも続(つづ)いてゆく → 世界(せかい)の果(は)てを目指(めざ)して
《気味が悪い》(くろい)首(くび)吊(つ)り道化师(ピエロ)の刺青(Tattoo)が笑(わら)う → あの笛(ふえ)の音(ね)に合(あ)わせて
心(こころ)に深(ふか)い暗(やみ)を饲(か)った者にとって 逆(さか)らえない魔性(ましょう)の音(ね)…
笛(ふえ)の音(ね)に诱(いざな)われ 一人(ひとり)また一人(ひとり)列(れつ)に并(なら)んでゆく
やがてそのパレードは 夕阳(ゆうひ)を遮(さえぎ)って地平线(ちへいせん)を埋(う)め尽(つ)くす…
喩(たと)えば箱舟(はこぶね)を信(しん)じた少女(しょうじょ)…
喩(たと)えば歪(ひず)んだ真珠(しんじゅ)の乙女(おとめ)…
喩(たと)えば収获(しゅうかく)を误(あやま)った娘(むすめ)…
喩(たと)えば妹(いもうと)を犠牲(ぎせい)にされた姉(あね)…
喩(たと)えば星屑(ほしくず)に踊(おど)らされた女(おんな)…
谁(だれ)も仮面(かめん)の男(おとこ)ABYSSからは逃(に)げられない…
「ごきげんよう、可哀相(かわいそう)なお嬢(じょう)さん。楽园(らくえん)パレードへようこそ！」
笛(ふえ)の音(ね)を操(あやつ)って　一人(ひとり)また一人(ひとり)列(れつ)に加(くわ)えてゆく
やがてそのパレードは 夕阳(ゆうひ)を裏切(うらぎ)って地平线(ちへいせん)を灼(や)き尽(つ)くす……
呜呼(ああ)…そのパレードは何処(どこ)までも続(つづ)いてゆく…
そのパレードは何処(どこ)へ向(む)かってゆくのだろうか…