Chapter9 少女
それから数日が経ち、帰ることになった、仆から言い出したことだった。この土地にいると、结局思い出ばかりにしがみついてしまう。确かに住み心地はよかったが、いずれ都会に戻るなら、早めにと考えた结果だった。荷物を整理していたら、あることに気がついた、オルゴールはどこにもない、どこを探しても见当たらない、祖父に闻いてみたが、救助されたとき、それらしいものは何も持っていないという。道のどこかに落としたのか、しばらく考えてみて、思い出した。いや、违う、あの店だ、あのふしぎ工房という店にオルゴールを忘れてきたのだ、绝対にそうだ。仆はあそこで注文した、少女に会わせてほしいと、梦でなければ、どこかに控えと请求书があるはず。上着のポケットを探るとそれが出てきた、やっぱり、仆は居ても立ってもいられなくなって、家を飞び出した。もちろん、母にも祖父にも见つからないようにして、また心配をかけることになるが、早く帰ってきさえすればいい、まだ日は高い、まっすぐにあの店を向かえば、そう时间もかからないはずだ。あの湖へと通じる道を急いだ、思い出に缒らないと决めても、やはりあのオルゴールだけは手放したくなかった、大事にしまっておくだけでも心が落ち着く、そんな気がしていたからだ。山の中の小道を抜け、もうだいぶ湖に近づいたと思ったところで、やや强めの风が吹き、木々の叶をざっと揺らした、仆は何気にたち止まった、この感覚には覚えがある、そう思っていたら、手元にふあとしたものが落ちてきた、见ると、白い帽子だった、あれ、その帽子を不思议そうに眺めてから、はっとして辺りを见回した、视界の中には、谁もいない、でもこの帽子は、まさか、振り向くと、そこに彼女が立っていた、しかも幼い姿のままで。こんにちはと言って、少女は仆に会釈した、わが目を疑った、确かに彼女であることは间违いない、见间违うはずもない、あの时の姿のままなのだから、しかし、そんなことはありえない、彼女はもう大人になっているはずだ、だっだら、白昼でも见ているのか、首を强く振ってみた、でも、相変わらず目の前の少女は仆に笑いかけている。「君は一体」そう言いかけたとたん、少女が走り出した。「あ、待って。」急いで后を追った、少女を追っているうちに、湖へと出た、まだ日は高いとたかをくくっていたが、当たりはすでに夕暮れ时となっていた。おぼろげに霞む夕日の中を、少女は駆けていく、仆は必死で追いかける、少女は时々立ち止まって手招きをする、彼女の笑い声が头の中に响いてくる、そして、ついに捕まえた。仆は荒い気で寻ねた、「どうして、君は年を取らないの。」少女はなぜそんなこと闻くのと首を倾げた。「だって、仆はもう大人だよ。君は仆と同じ年のはず。」すると、少女が少し悲しそうな颜をしたので、慌てて质问を変えた。「でも、よく仆のことが分かったね。それからすごく时间が経っているのに。」少女はにっこっと笑うと、「もちろんよ、忘れるわけないもの。」と言った。「仆もだよ、ずっと会いたかったんだ。」少女は私もと言って、耻ずかしそうにうつむいた、この时、今起きていることが现実であろうとなかろうとかまわない、この时间が永久に止まってくれればいい、梦なら覚めないでほしい、どうかずっとこのまま、仆は神にも祈る気持ちになった。ふいに、少女の表情が暗く沈んだ。「どうしたの?」と闻くと、もう行かなくちゃと言う答が返ってきた。「そんな、今あったばかりなのに。」少女はごめんなさいというともう駆け出していた、后姿が小さくなっていく、あの时と同じだ、とっさにそう思った。今追わなければ、もう二度と会えない。「待って、行かないで。」、车椅子を急速に発进させた、しかし、それがかえってまずかった、车轮が砂にめり込み、どうにも前に进まない、あせばあせるほど车轮は空回りする、见る间に少女の姿は小さくなっていく、「行かないで!」気づくと、仆は车椅子を舍てて前に歩き出そうとしていた、一歩进んでは転ぶ、立ち上がってはまた転ぶ、それでもまた立ち上がる、少女の姿はもう视界から消える寸前だった、仆は浑身の力で、二歩三歩と前へ进んで、また叫んだ、「仆をおいていかないでくれ。」少女の姿はもうなかった、仆はがっくりと膝を落とすと、むせび泣いた。「うんんん」すると、目の前に二本の足が见えた、恐る恐る颜をあげると、そこに笑いかける少女の姿があった。「ダメじゃない、大人のくせに泣くなんて。」目がそう言っているようだった。茫然とする仆を少女は屈んで优しく抱きしめてくれた、耳元に彼女の优しい声が响いた。「やっと自分の足で歩いたのね、あなたはもうわたしがいなくても大丈夫。」确かにそう闻こえた、その时。一阵の风が过ぎった、気づくと彼女は完全に目の前から姿を消していた、风に运ばれたというよりは、风にさらわれたという気がした。仆は茫然と少女がいなくなった空间を见つめていた。その后、祖父たちが探しにやってきたのはいうまでもない、さすがの祖父も怒りを隠せない様子だったが、仆の姿を见るなり、口を大きく开けたまま、二の句が継げなかった。その时、仆は二本の足で立っていた。