真红はもう一度うなずく。
　　真红　　「だって私はあの子たちの先生なんだぞ」
　　悠马　　「せんせい」
　　真红　　「ああ」
　　真红　　「……この世界では违うけど、でも、あの子たちの颜を见てたら、どうしてもそれを意识しちゃうっていうか、思い出しちゃうっていうか……」
　　悠马　　「要するに格好つけたいんだな真红は」
　　真红　　「嫌な言い方するなよ。……本当のことだけど」
　頬を膨らませていた。
　　真红　　「そんなことを言う悠马は、嫌いだ」
　そっぽを向いた。
　　悠马　　「ごめん。许して」
　　真红　　「……どうしようかな」
　　悠马　　「今度、美味しいホットケーキ、作るから」
　　真红　　「なら许す」
　にっこりとした。
　　真红　　「あんまり甘くないヤツだぞ」
　　悠马　　「了解」
　　真红　　「コーヒーも一绪にな」
　　悠马　　「美味しいのを煎れられるようにがんばろう」
　　真红　　「楽しみだ」
　ほんわり頬を缓めた。
　　真红　　「ホットケーキも、コーヒーも、たくさんたくさんだ」
　　悠马　　「あんまり食べすぎないようにね。お腹、痛くなるかもだから」
　　真红　　「痛くなったら、お腹、悠马がさすって」
　　真红　　「そしたらきっと、すぐに治るから」
　　悠马　　「……いまは、痛くない？」
　　真红　　「ああ。ぜんぜん」
　　悠马　　「うそだ。ちょっとくらいは痛いだろ」
　　真红　　「や、やめろよ、もうっ、くすぐったいじゃないか……っ」
　膝の上で真红が暴れる。
　……少しだけ、ふたりではしゃいだ。
　　悠马　　「……映画は？」
　一时停止にしていた画面を、リモコンで指す。
　　真红
「うん。観よう」
　　悠马　　「ああ。わかった」
　　悠马　　「――その前に何か軽くつまめるものがないか探してみようか」
　　真红　　「さっき夕饭食べたばかりなのに？」
　　悠马　　「気分の问题、かな」
　　悠马　　「映画を観るときは、そういう风にするものだって、真红も前に言ってたろ？」
　そうして立ち上がろうとするけど、真红は膝の上からどいてくれない。
　　悠马　　「あの、真红。そこどいてくれないと、动けないかな」
　　真红　　「テーブルの上に何か包みが置いてあるけど」
　　悠马　　「ほんとだ。何かな」
空
　开いてみる。
　　悠马　　「クッキーだ。美味しそう」
　谁のかな。
　　悠马　　「……胜手に食べるのはよくないよな。やっぱり冷蔵库に何か食べてもよさそうなものがないか、见てこよう」
　　悠马　　「真红。ごめん。やっぱり、一度降りてくれないかな」
　　真红　　「…………」
　　悠马　　「真红？」
　　真红　　「なら、悠马」
　　悠马　　「うん？」
　　真红　　「だっこして」
　　悠马　　「え。だっこって」
　ちょっと惊く。
　　真红　　「今日の私はがんばったんだ。悠马の膝に座れた。……ちょっと耻ずかしいのをがんばって、座りたいって、言ったんだ」
　　真红　　「だから……ここまできたら、思いっきり子供みたいなことをするんだ」
　　真红
「たくさん、するんだ」
　　悠马　　「……たくさん」
　俺が、“子供っぽい真红も大好きだ”と言ったから。
　　真红　　「ああ」
　　真红　　「それで、悠马が、少しでも私のことを、可爱いって――」
食堂
　　加奈
「あ」
　　悠马　　「…………」
　　真红　　「…………」
　目が合う。三人とも硬直した。
「ちょっと。どうしたの。早く行って。そんなところで立ち止らないでよ」
　　加奈　　「え、ええっと……」
　　澪
「どうしたのよ」
「お愿い。起きるのよ」
　加奈の背后から“なにかあったの”と颜を出す澪。
　　澪　　「あ……」
　　加奈
「あ、あはは。何だかお邪魔でしたでしょうか？」
　どうやら気を使われているようだ。
　　加奈　　「あの、私たちはちょっと忘れ物をしただけでして……」
　　加奈　　「如月さんが、さいきん喧哗の多いお父さんとお母さんのために授业で作ったクッキーを忘れてしまいまして……」
　　加奈　　「それが食堂にあるんじゃないのかと话してて……。あ。ありました！　テーブルの上にあります」
　　悠马　　「……澪のだったんだこれ」
　胜手に食べないでよかった。
　と。ちょっとだけ场违いかもしれない安堵を覚える。
　　加奈　　「如月さん、早く忘れ物を取ってきてください。あ、おふたりとも、そのクッキーを取りましたら私たちは帰りますので、どうかごゆっくりと……」
　　澪　　「えとえと」
　　澪　　「あ、そうか……」
　　加奈
「ちょ、ちょっと何してるんですか如月さんっ」
　　澪　　「え。だっていま、撮りなさいって」
　携帯电话を掲げている澪だ。
　　澪　　「そのクッキー撮りなさいって」