樓主少了這幾段。
マンドリンみたいなのを持っているのは当然、音楽神だろう。二十歳前後の金髪イケメン青年だ。こちらに柔和な笑みを浮かべて微笑んではいるが、楽器を奏でるその手は止まることがない。
この人、楽器で感情を表してるんじゃなかろうか。事実、僕らに気付いてからは曲調が変わったし。
果物を食べていた壮年の男性は、常に笑っているように見える。糸目だ。朴訥そうな雰囲気と、地味な茶髪に静かな佇まい。この人が農耕神かな。
と、なると、残ったあの緑ポニーテールの女性が狩猟神か。傍らには急拵えで作ったような弓があるし。
肉を焼いているけど、自分で狩ってきた獲物かな。それ以前にそのマンガ肉みたいなの、なんの動物のどこの部分ですか。気になるわ!
「あなたたち、なんでこんなに揃って降りてきてるのよ。従属神相手に、いくらなんでも多すぎるのよ?」
「うんにゃ、違うよ。ウチらは従属神担当じゃないさね」
焼けた肉をもぐもぐと噛みちぎりながらポニーテールの狩猟神が、花恋姉さんに答える。ずいぶんとワイルドな人……神だな。従属神担当じゃない? どういうことだ?
「自分たちの担当は君だよ。望月冬夜君」
「僕!?」
糸目の農耕神のおっさ……いや、おじさんが僕に向けて指を差す。思わず僕も自分で自分を指差してしまった。
「冬夜君が担当ってどういうことだい?」
諸刃姉さんが僕の代わりに疑問に思ったことを口にしてくれた。
「うん。彼は人の身でありながら世界神様の神気を受け、その眷属として神化しようとしている。その若き新神しんじんが、正しくその道を歩めるように、フォローや支援をするのが先輩たる自分たちの務め……」
「って、ことにしとこうって、さっき決まったのだー! 遊びに来たー!」
うおい! 酒神さんよ、ぶっちゃけたな!
なにかい? 人をダシにして地上に降りて来たわけ? 神様って暇なの!?
それを聞いてケタケタと狩猟神が笑う。
「いやー、地上に降りたのって数万年振りだから、「人化」してもまだ身体が慣れねえや。ちょいと魔獣の二、三匹狩ってみたけど、神力を使わず狩るのも面白いもんさね」
「あちしもー! 神酒ネクタル以外のお酒なんて久しぶりー! 酔うねー! 素敵だねー!」
「自分も久しぶりに大地の恵みを感じていますよ。実に美味い」
「…………」
三人に同意するかのように、音楽神が楽器を軽快に弾き鳴らす。この人喋んないの!?
「呆れたのよ。よく世界神様が許したのよ」
「いやいや、「行きたい」って言ったら「よかろ」って、けっこうあっさりだったさね。確かにちゃんとそこのボーヤのフォローはしろとは言われたけれどね」
「ボーヤはやめて下さいよ……」
うむう。神様が気を利かせたのかもしれんけど、全員一癖も二癖もありそうなメンツなんだが……。
「まーまー、気にすんな、気にすんな! ほら呑め呑め!」
狩猟神のお姉さんが木製のコップに入った酒を押し付けてくる。いや、呑めないことはないけど、強引だな!
「っていうか、酒なんてどっから手に入れたんです?」
「んー? 森の中で魔獣に襲われてた部族を助けたら、お礼にってくれたんだぞー。あちしは酒神だけど、神界うえのお酒は無駄なものが入ってないから、ちょい味気ないのー。こっちのお酒はいいねー! 尖ってて、「これが俺の味だ、文句あっか!」って感じー!」
にししし、と笑う酒神。酔っ払ってるのか? よくわからん。見た目が幼女なので心配になってくる。顔が真っ赤だけど大丈夫なの!?
その酒神がフラフラと僕のところまで来ると、がっしと足にしがみついて来た。なんですか……?