猫の凉み
猫は、凉しい场所を本能的に探すことのできる动物である。
「あの~、直りそうですかぁ?」
自分の部屋のクーラーを分解している电気店のお兄さんを见上げながら、寿美幸は甘い声を出す。壊れてしまったため、修理してもらっているのだ。それはおそらく、彼女が不幸なためよく周りの物が壊れるからではなく、単に使いすぎたのが原因だ。昼も夜も、部屋にいるときはずっと付けっ放しにしていたのだから。
「中の蒸発机が完全に逝っちゃってますから、もう买い换えてもらわないと……」
ちらっと、美幸は自分の母亲を见る。困った颜をしながらも、母亲は颔いた。
「いつ届くんですか?」
「本店の方から取り寄せるんで、三日か四日はかかるかと」
「三日か四日って、地球が何回まわった日?」
「……三回か四回だと思いますけど」
とにかく、少なくとも数日は直らないということ。『夏=クーラーを付ける』という方程式が确立している美幸にとってそれは我慢ならないことだった。电気店のお兄さんが引き上げて十分もしないうちに、いつもの癖でクーラーのリモコンに手を伸ばしてしまった。
だが、気持ちは分からないでもない。确かに今年の夏は异常に暑い。今朝の天気予报のお姉さんは、最高気温は三十八度だと言っていた。夏休みに入ってからは毎日のように三十度后半を叩きだしている。美幸は地球温暖化に対してそれなりに悬念を抱いていながら、结局のところ自分自身もクーラーを付けっ放しにしてそれの加速に一役买ってしまっている、そんな人间だった。
「あら美幸ちゃん、お出かけ?」
玄関で外靴に履き替える自分の娘に、美幸の母亲は言った。
「うん。夜になったら帰ってくるからね」
こうして猫が一匹、凉しい场所を求めて旅に出る。
自分の部屋で饲っている热帯鱼たちを、八重花桜梨は额に汗を浮かべながら眺めていた。水槽の中はまるで别世界のようで、彼らは軽やかにその中を自由に泳ぎまわっている。中に入ってみたいとさえ花桜梨は思った。
どこぞの人とは违って、どんなに暑くても花桜梨は日中からクーラーを付けるという暴挙には出ない。以前バレーボールを嗜んでいた顷の名残で、快适すぎる环境に身を置くことによる体力と精神力の低下を避けるためだ。それに加えて、文字通り热い场所に暮らしていた热帯鱼を饲っていることも少なからず関系しているのだろう。
とは言うものの、さすがにこの暑さは身に応える。今朝の天気予报のお姉さんは、最高気温は三十八度だと言っていた。これは今日に限ったことではなく、夏休みに入ってからは毎日のように三十度后半を叩きだしている。けれどもこの异常なまでの暑さは人间が作り出したもの。暑くて嫌になりますねー、とぼやく人ほど家の中で终日クーラーを付けたりしていっそう外界の暑さに拍车をかけている。自业自得だ。花桜梨は地球温暖化に対してかなり否定的な意见を持っていた。
「花桜梨、出かけるの?」
玄関から闻こえてきた物音に反応して花桜梨の母亲が言う。
「うん。……ちょっと」
こうして猫がまた一匹、凉しい场所を求めて旅に出た。
猫は“最も”凉しい场所を本能的に探すことのできる动物である。
つまり、同じ场所に集まる场合が多い。
「あ、八重さん」
后ろから名前を呼ばれ、中央公园の木阴に座り込んでいた花桜梨は振り向く。しかし、知っている颜ではなかった。
「えっと……?」
「美幸だよ~。同じクラスの寿美幸」
二匹の猫は同じ群れの猫だった。しかし话をしたことはほとんどない。仲が良くないというか、今までに仲良くなるきっかけがなかったのだ。
猫は、凉しい场所を本能的に探すことのできる动物である。
「あの~、直りそうですかぁ?」
自分の部屋のクーラーを分解している电気店のお兄さんを见上げながら、寿美幸は甘い声を出す。壊れてしまったため、修理してもらっているのだ。それはおそらく、彼女が不幸なためよく周りの物が壊れるからではなく、単に使いすぎたのが原因だ。昼も夜も、部屋にいるときはずっと付けっ放しにしていたのだから。
「中の蒸発机が完全に逝っちゃってますから、もう买い换えてもらわないと……」
ちらっと、美幸は自分の母亲を见る。困った颜をしながらも、母亲は颔いた。
「いつ届くんですか?」
「本店の方から取り寄せるんで、三日か四日はかかるかと」
「三日か四日って、地球が何回まわった日?」
「……三回か四回だと思いますけど」
とにかく、少なくとも数日は直らないということ。『夏=クーラーを付ける』という方程式が确立している美幸にとってそれは我慢ならないことだった。电気店のお兄さんが引き上げて十分もしないうちに、いつもの癖でクーラーのリモコンに手を伸ばしてしまった。
だが、気持ちは分からないでもない。确かに今年の夏は异常に暑い。今朝の天気予报のお姉さんは、最高気温は三十八度だと言っていた。夏休みに入ってからは毎日のように三十度后半を叩きだしている。美幸は地球温暖化に対してそれなりに悬念を抱いていながら、结局のところ自分自身もクーラーを付けっ放しにしてそれの加速に一役买ってしまっている、そんな人间だった。
「あら美幸ちゃん、お出かけ?」
玄関で外靴に履き替える自分の娘に、美幸の母亲は言った。
「うん。夜になったら帰ってくるからね」
こうして猫が一匹、凉しい场所を求めて旅に出る。
自分の部屋で饲っている热帯鱼たちを、八重花桜梨は额に汗を浮かべながら眺めていた。水槽の中はまるで别世界のようで、彼らは軽やかにその中を自由に泳ぎまわっている。中に入ってみたいとさえ花桜梨は思った。
どこぞの人とは违って、どんなに暑くても花桜梨は日中からクーラーを付けるという暴挙には出ない。以前バレーボールを嗜んでいた顷の名残で、快适すぎる环境に身を置くことによる体力と精神力の低下を避けるためだ。それに加えて、文字通り热い场所に暮らしていた热帯鱼を饲っていることも少なからず関系しているのだろう。
とは言うものの、さすがにこの暑さは身に応える。今朝の天気予报のお姉さんは、最高気温は三十八度だと言っていた。これは今日に限ったことではなく、夏休みに入ってからは毎日のように三十度后半を叩きだしている。けれどもこの异常なまでの暑さは人间が作り出したもの。暑くて嫌になりますねー、とぼやく人ほど家の中で终日クーラーを付けたりしていっそう外界の暑さに拍车をかけている。自业自得だ。花桜梨は地球温暖化に対してかなり否定的な意见を持っていた。
「花桜梨、出かけるの?」
玄関から闻こえてきた物音に反応して花桜梨の母亲が言う。
「うん。……ちょっと」
こうして猫がまた一匹、凉しい场所を求めて旅に出た。
猫は“最も”凉しい场所を本能的に探すことのできる动物である。
つまり、同じ场所に集まる场合が多い。
「あ、八重さん」
后ろから名前を呼ばれ、中央公园の木阴に座り込んでいた花桜梨は振り向く。しかし、知っている颜ではなかった。
「えっと……?」
「美幸だよ~。同じクラスの寿美幸」
二匹の猫は同じ群れの猫だった。しかし话をしたことはほとんどない。仲が良くないというか、今までに仲良くなるきっかけがなかったのだ。