ATE開局記念のお祭りは無事にその一日を終えた。
「あー、まだ五分寝てたいよー」
あくる日の朝はさすがに起きるのがつらい姫乃だった。
夜ハ時からの放送で「ワーズ・ゲー卜」の特番は十時には終了したものの、片付けやなにやかやで、家に帰ったのは十一時を過きていた。
当然、ボランティアスタッフの姫乃にもタクシー券が配られて、ちゃんと家の前まで送ってもらえた。
ただ、夏江は当然だが、繭根も真綿も黒塗りのリムジンで家まで送られてきたのに、姫乃は他のスタッフ数人が乗りあうタクシーという差がついていた。
しかし、淡雪家の朝食は定刻通り、いつもと変わらずリッチな食卓で始まっていた。
「繭根ちゃん、テレビでひときわ目立ってきれいだったね」
一日中にいて、記念番組をみていたという父、淡雪薫の感想だった。
真綿ったら' 急に気分が悪くなったって、わたくしの携帯に電話よこすんですもの。偶然、近くにいたからよかったけど。お母様、やっぱり、テレビ出演はわたくしがむいてますでいよう。
真綿、今朝は気分はいいの」
ええ、お母様、ご心配おかけしました」
相変わらず真綿はクールだな、と姫乃は思った。
「それは、そうと' 姫乃さん、ボランティアスタッフなさってたそうね。働いてくださったことは感謝しますけど、事前にわたくしに言ってもらわないと。淡雪家の人間をスタッフとして働かせているのをオーナーのわたくしが知らなかったといいうのは、ちょっと体裁もありますからね
あ、すみません。裏方の目立たない仕事だから……お母様に言うほどのこもでも……と思って」
とにかく、何でも、うちの企業と関わることは、默ってやらないように。これからはくれぐれも気をつけて」
夏江の口調はあくまでも厳しかった。
「そうだよ、姫乃の勝手な行動がお母さんの迷惑になることもあるからね。自覚をもとうね、姫乃」
父・薫の口調は優しかったが、しかし、姫乃にとっては辛い語調に聞こえた。
「で、姫乃、細には会えたの?どんな顔してるの? ハンサム?」
繭根が矢つぎ早に質問してきた。
「ぜーんぜん。ボランティアのあたしなんかスタッフルームで仕事するだけで、本人なんかに近づける状況じゃなくって」
「なんだ。そう。ま、そうでしょうね。一介のボランティアスタッフのコになんか会うわけないもんね」
这样子啊,不过也对,你只是一个志愿工作者怎么可能见到他呢?
繭根は、姫乃の言葉にあっさり納得していた。
そのとき真綿の方にもちらりと視線を送った姫乃は、ふと安堵の表情をもらした真綿のうつむき加減の顔を見逃さなかった。
やっぽり、真綿ちゃんて、細のファンなんだ。何事にも、誰にも興味ないみたいな真綿ちゃんんだけど、やっぱりふつうの女の子なんだ。ちょっとホッとした感じ。それにしても、細のパワーもすごい。誰の心でも開いちやうんだから)
「ねえ、お母様。こんど、細に会わせてくださらない」
繭根は母,夏江に甘えた声で賴んだ。
「繭根、あなたには、ハリウッドの俳優さんたちを囲むレセプションに連れていこうと思っていたけど、庶民が騒ぐよぅなDJに会いたいというのね」
「あ、いえ、お毋様、わたくしにはハリウッドのスターの方たちのほぅが....細とかいうDJには興味ございませんもの。ただ、真綿がフアンみたいだから、一度家にでもお招きすればと思って」
「あら、真綿そうなの?」
「いえ、お母様、わたし、興味ないですから」
そう言うと、真綿はすっと席を立った。
「繭根、そろそろ時間でしょ」
「そうだったわ、田中!車を」
「あ、繭根お嬢様、お花が届いておりますが」
運転手の田中が大きな花束を抱えてやって来た。
「繭根お嬢様のフアンの方からのようですよ」
「あらいやだわ、テレビに出るとすぐこうなんだから」
メツセージカードガついてます
読んで
「山田春男より」ゅぅずぅ
「山田……誰?ぁぁ、ぁの融通のきかない警備員!にがぉ、
ATBの正面玄関で絶対繭根を顔パスさせなかった蟹顔の男だ。
「ぁあ、あの瞀備員さんですよ。奥様、昨日ATBの玄関に配備されていた。わたくしが聞いたところでは、世界警備員コンクールで優勝経験もある優秀な警備員とか」
「あら、そうなの」
哎呀,是吗?
「興味ないわ、田中。あ、お花は姫乃にあげるわ。手入れがお上手だから」
そう言うと、繭根は、真綿とともにそそくさと出かけていった。
「姫乃、遅れるよ」
ひとり、悠長に朝食をとっている姫乃に、薰は心配そうに声をかけた。
「いいの、あたしは、近道知ってるから」
リムジンに乗るより、林の裏道を通り抜ける方がすっかり性にあってしまった姫乃の姿がそこにぁった。
第一章完结