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【原著延伸小说】新白雪姬传说文库版

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这是一本新白雪姬传说的小说版,历经千辛万苦终于在日本淘到了这本书,大家都可以看看,但是因为这是一本日本小说,所以内容当然是日本的,所以小说是以日语的形式呈现,有机会的话我会去试着翻译,但是其实我是不会日语的,如果吧里有亲是懂日语的也欢迎来翻译。
本书的名字是:
新白雪姬传说プリーティア七人のナイト
翻译过来就是:新白雪姬传说普莉缇亚与七位骑士
当然各位亲也可以自行海淘一下,有缘的话就能淘到。
解释一下:这本书的故事是写姬乃与7位里菲骑士的日常生活事务,内容没有涉及到灾妃,不是TV和漫画的延伸,作者也不是佐藤和成濑老师,是其他人写的。
下附书的封面:

下帖开始更新小说内容,不足之处尽情谅解。


IP属地:广东1楼2019-08-13 10:35回复
    整本小说总共分为7个章节:
    第一章:ヮーズ・ゲー卜・スぺシャル
    第二章:招かれざる客
    第三章:GOGOレス卜ラン
    第四章:弥生のマル秘日記
    第五章:見てはいけないものを
    第六章:ホームぺージdeゲーム
    第七章:小さな恋物語
    大致的意思是
    第一章:特别的心灵之门节目
    第二章:不速之客
    第三章:restaurant餐厅
    第四章:弥生的绝密日记
    第五章:那些不能看到的事
    第六章:网页上的游戏
    第七章:微小的恋爱故事
    下面是内容简介
    简介
    父親が大財閥の未亡人と再婚したことで、突然大金持ちのお嬢様になってしまった高校1年の姫乃。淡雪タウンで超ゴージャスな生活を送ることになったのだが、新しい家族は彼女にちよっと冷たくて……。
    淡雪タウンのドキドキの每日、そして、姫乃と彼女を取り巻く7人の美少年の知られざる魅力に迫る、話題のTVアニメの小説版!!
    简介
    高中一年级的姬乃因父亲与和大财阀的寡妇再婚,突然变成了有钱的大小姐。虽然在淡雪市过着超豪华的生活,但是新家人对她还是相当冷淡……
    淡雪市心跳不已的每一天,以及接近围绕姬乃和她身边的7个不为人知的美少年魅力,热门的TV动画片的小说版!!
    人物介绍我就不贴了,主要人物是姬乃和7位里菲骑士,大家对他们的人物介绍应该很熟了,不熟的话,可以查看百度百科                 


    IP属地:广东2楼2019-08-13 10:42
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      第一章:ヮーズ・ゲー卜・スぺシャル
      なんで? 入館証が必要だっていうの? わたくしは淡雪繭根よ。いつもは顔パスで通していただくのに、今日は通せないっておっしやるの? まったくあきれて物もいえないわ」
      ここは、淡雪タウンが誇る放送局ATB(淡雪タウンプロードキャストの略)。その正面玄関で強靱(きようじん)な体驅(たいく)の警備員と押し問答をしているのは、淡雪家の長女、高校一年生の淡雪繭根だ。
      腰ま(こし)で伸(の)ばしたロングへアを波打たせ、ゴージャスなオーラを周りにふりまいているその出で立ちは、とても高校生とは思えない威圧的な存在感がある。
      ボウクイのシャツにエンプレムつきのニット・ヘスト、チェックのプリーッスカートという淡雪女学院の制服を着ていても、コギャル的ガキっぱさはみじんもなく、女王的風格を備えた繭根であった。
      今日は、特別な日ということで、警備は強化されてんだあ」
      だが、平家蟹(いけがに)のような顔したいかつい警備員は、繭根の存在感に圧倒されることなく、淡々と素朴な口調で切り返した。
      「なあに、あなた、どこか他所からいらしたの?」
      「ああ、東京さあ、初めてだども」
      “変だと思ったわ。淡雪タウンの人間だったら、わたくしの顔を知らないはずがないですもの”.
      冷静になって、見てみると、繭根の顔を見て、「あ、お嬢様」と駆け寄ってくるいつもの警備員はいなかった。
      確かに、今日は特別な日だ。
      ATBの開局記念日だからだ。
      いつにも増してがたくさん来局するというので、警備員を補強したのだろう。
      しかも、正面玄関(げんかん)には意図的に融通(ゆうずう)のきかない、地方から臨時派遣(はけん)された人間を配備したのだと思われる。
      今日に限っては顔パスを認めず、例外なく警備を徹底(てつてい)させようという方針なのだ。
      規則は規則だからねえ。入館証さ、持ってない人を通すわけにはいかないんだども
      わからない人ね。とにかくお母様を呼んで,今、会長室に来ているはずよ」
      アポイントのない方も取次ぐなと言われてるんだ
      秘書室に連絡(れんるく)らい取れるでしょう
      「決まりは決まりだあ」
      「もお、全く融通がきかないんだから」
      繭根はいたく不機嫌な面持ちになった。
      何せ、学院のお取り巻きを引き連れて来ている。
      その前で恥をかかされたわけだから、繭根のプライドとしてはこのまま引き下がるわけには、いかないのだ。
      なっとくいかない。もう、こうなったら、お母様に電話するしかないわ」
      繭根は携帯電話の短縮ボタンを押した。
      だが、むなしいかな、母・夏江の携帯電話は通じなかった。
      多忙(たぼう)を極めているときは、いつもそうだ。
      繭根の母、淡雪夏江は世界有数のプランドとしてその名を轟かせている業界最大手の化粧品会社の会長。グループ企業として成長を遂(と)げた母親の会社は傘下(さんか)
      にいくつもの企業(きぎよう)を従えている。
      放送局のATBもその一つ。淡雪夏江は筆頭株主であり、ATBの会長職も兼務している。繭根は、ATBの会長の長女。つまり、ご令嬢であるから、繭根としては当然、いつものように、今日も特別扱いで手厚くもてなされるはずだと思っていた。
      顔パスで局内に入って、ゲスト出演に来たスターたちと握手したりして、取り巻き連中に自分のカのあるところを誇示しようとしていたのだ。
      なにせ、今夜のゴールデンタイムは、国内外の有名スター、スポーツ選手、著名な文化人などが次々に出演する。ハリウッドからは、プラット・ビッドやデオナルド・レカプリオ、キャメレン・デアス、音楽界からはマライヤ・キャイーン、マイケル・ジョクソン……などなどといったビッグ・ネームまでもが
      それが、今日に限って出鼻をくじかれた。
      「山田春男っていうのね、あなたの名前」
      繭根は警備員の制服の胸についてる名札を見てそう言った。
      あなたのをたくしに対する失礼な態度、よ-く覚えておくお。お母様に言えば、あなたなんて明日からクビですからね。ほ、ほっほほほほ
      繭根は大きな声で高笑いをしてみせた。お嬢様としてのプライドが、決して屈服しはしないと、言いたげに。
      だどもおここの警備の仕事は今日だけで、明日は故郷に帰るから、かまわねえさ」
      淡雪タウンの人間なら、みな繭根にひれふし、かしずくのに、この蟹顔の警備員に限っては、全く“のれんに腕押し”。状態だった。
      「お姉さま、あまりみっともないマネしないでくださる?
      と、そのとき、冷めた目つきをした美少女が、カッカッと繭根のもとへ近づいて来た。やはり淡雪女学院の制服を着ているが、妙に大人びた雰囲気を放っているその少女は繭根の妹、淡雪真綿。
      真綿は淡雪女学院中等部ニ年生。容姿端麗にして成績優秀。クールで品格があり、カリスマ女子中学生として憧れの的となっている。
      「淡雪真綿様ですね。お待ちしてました。こちらからお通りください。入って右手の受け付けで担当者を呼び出してください」
      警備員の山田は、真綿の顔を見るなり、さっとかしこまってこ、う言った。
      真綿がまだ名乗ってもいないうちからだ。
      「ちょっと、山田とやら、どうしてこの子が淡雪真綿だとわかったのよ」
      「そんれは、事前に来局者リストと写真配られてっから、全部覚えてるんだあ」
      いつもこの正面艾関にいる警備員は、来局者の顔と名前を正確に覚えてはいない。名前を尋ねたり、入館証を確認したりしている。
      確かに、今日、わざわざ派遣されただけあって、山田は優秀な警備員なのかもしれない。
      「だけど、真綿、なんで、あなたが中に入るのよ」
      「開局記念番組に、淡雪女学院の生徒を代表して呼ばれたの」
      真綿は繭根にクールに言い放った。
      「どうして?真綿が淡雪女学院の代表に選ばれるのよ。姉のわたくしを差し置いて」
      自分は門前払いをくらって恥をかかされたのに、妺の真綿は来客として扱われている。
      しかも、淡雪女学院を代表してだとは、その差にますますいらつく繭根であった。
      「よく知らないけど、ATBが開局した日にわたしが生まれたということで指名があったらしいわ
      そう言うと、真綿はクールな表情を崩(くず)さないまま、するりと玄関の中に入って行った。
      「ますいますい、遅刻だあ」
      繭根の背後に、今度は、どたどと駆け足でやって来る賑やかな声がした。
      チューリツプの花が開いたようなへアスタイルをその少女は、やはり、淡雪女学院の制服を着ていた。
      「あら、姫乃しゃない?」
      「繭根?」
      何しに来たの?今日はせキュリテイチェツクが特別厳しいの。いくら淡雪家の人間でも、特別扱いはできませんことよ。ま、あなたは、淡雪家の人間にはとても見えないほど貧相だから、特別扱いもしようがありませんけどね。ほっほほ
      繭根は姫乃の姿をみつけるやいなや、自分のことはタナに上げ、高飛車(たがびしゃ)な言い方をして制してみた。
      繭根は姫乃の義理の姉。姫乃の父親が繭根の母と再婚したから、姉妹になった。といっても同い年なのだけど
      姫乃は新しい家族と仲良くしたいと思っているのだけど、プライドの高いお嬢様気質の繭根は、姫乃の存在を歓迎してはいなかったのだ。
      「あのお、淡雪姫乃様ですね。お待ちしてました。こちらからお通りください。右手の受け付けで担当者を呼び出してください」
      また、蟹顔(かにがお)の警備員の山田がやって来て、姫乃に声をかけた。
      「あら、姫乃まで?」
      繭根は愕然となった。


      IP属地:广东3楼2019-08-13 10:46
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        「まさか、姫乃まで、開局記念番組に?
        そう……だけど」
        「まさか?淡雪女学院を代表してだなんてことは?
        「代表ではないけど、開局記念の一日ボランティアスタッフになったの」
        「はあ?ボランティアスタッフですって?あなた淡雪家の人間が、下々の者と同じように働くつもり?まあ、みっともない
        「みっともなくはないよ。それに、繭根、あたしのこと淡雪家の人間に見えないんじゃなかったの?それじゃあ、認めてる発言だよ。ま、うれしいけどね」
        「いやだわ、揚げ足取るなんて。認めてませんから、ボランティアでもなんでもなさって。で、ボランティアって何をするおつもり? 姫乃さん」
        「細くんの番組のお手伝い
        「細くん?て、ワーズ・ゲートのパーソナリティーの細?」
        「そうよ
        「なんで、なんで姫乃が細と知り合いなの?」
        「あ、そうじゃなくて、細くんの番組のスタッフの人から頼まれたの」
        「どうして、スタッフを知ってるわけ?」
        「前に住んでたところの、ご近所の家の息子さんで……
        ふーん、息子ねえ。あなたって、いろいろとお友達がたくさんいらして、よろしいこと」
        姫乃は友達が多く、顔が意外に広い。
        特定の彼氏はいなさそうだが、男の子の、それも結構ポイントの高い友達が何人かいたりする
        特技が空手で、幼いときから武道をいろいろ習ってきたという環境もあるのだろう。
        だが、繭根にはそれが気に入らない。
        「もしかして繭根って、細のファンだったりして」
        細の番組はATBでもダントツに人気があるラジオのDJ番組なのだ。
        「まさか、それは細ファンは真綿のほうよ。真綿がよく聴いてるわ。ワーズ・ゲート」
        「そうか。真綿ちゃんに悪いな。代わってあげたいけど、それは…...
        「やだわ。真綿はボランティアスタツフなんてやらなくてよ。でも、真綿なら、もうとっくに局の中に入って行ったわ」
        「真綿ちゃんが?」
        「淡雪女学院生徒代表として、呼ばれたみたい
        生徒代表?そごいなめ。さすが成績優秀で学院一の人気者だよね
        違うわ。真綿が単に開局した日に生まれたからですって。それだけよ
        へえ、そうなんだ。ところで繭根は、何しに来たの?」
        わたくし?あ、お、お母様と待ち合わせて…...。今日はいろいろVIPがいらっしやるから、淡雪家の長女として、ご挨拶しないといけませんもの」
        「みんな忙しいんだね。あ、いけない。遅刻だ遅刻!」
        姫乃は、そう言い残して慌てて、局内に入って行った。
        「あんた、淡雪繭根さんて言ったよねえ」
        再度、蟹顔警備員の山田が近づいて来た。
        「そうよ。もしかして、わたくしの名前も来局者リストにあった?お忘れだったの?」
        ない
        山田の返事はそっけなかった。
        「確認のためにもいちど見たども、ない。やっぽりあんた、今日は諦めて帰るべな」
        そう言って、山田はくるっと背を向けた。
        繭根の表情はさらに険しくなるばかりだった。
        放送局の内部は実に複雑にできている。
        廊下が迷路のようにいりくんでいて、もと来た通路を戻れないほど混乱する。
        それは、外部の人間がいきなり侵入しても、容易に電波ジャックできないような防犯の意味もあるのだ。
        「ワーズ・ゲートのスタジオは確か…...最上階の二十階のつき当たり…...
        エレベーターを降りた姫乃は、よく掃除のいきとどいたツルツル滑る廊下を走るように急で進んだ。
        「走っちやダメだよ、姫乃。放送局も学校の廊下とおんなじ」
        細!
        銀色に光る髪をなびかせた青年が姫乃の後ろから、響きのいい、よく通る声で声をかけた。
        「そろそろ本番前の打ち合わせが始まるよ。スタジォの前のA会議室でスタッフのみんながスタンバってるからさ」
        彼こそ、ATBでナンバーワンの人気を誇るDJパーソナリティーの細である。
        彼が登場する「ワーズ・ゲート」という深夜番組のリスナーは主に中高生で、リスナーが抱えるいろいろな悩みに、本音で飾らない、それでいて思いやりがある言葉を即興の歌に乗せて答えてくれる。
        だからとても人気があるのだ。
        引き込まれるように輝く瞳で微笑む細の表情は、誰だれをも魅了する。
        けれども、細の声は全国的に有名になっていても、その顔は全く知られていない。
        知っているのは、番組のスタッフや細とごく親しい人間.ている。
        ラジオ番組のバーソナリティーという性格上、顔がらず謎めいていたほうが、よりリスナーの想像が膨らむ。
        インターネット上を飛び交う噂では、 かなりの美男子というのが定説になっているが-ネシ。
        トユーザーで細の顔をした目撃者はまだいない。
        だからこそ、イメージはより膨らんで、細の美男子伝説は一人歩きしている。
        さて、姫乃は、細の素顔を知っているごく親しい人間の一人ということになる
        玄関で繭根に会ったときは、細の番組のスタッフと知り合いだ、みたいについ言ってしまったが、細のプライ八シーを守るために、そう言うつしかなかったのだ。
        姫乃と細はもともと顔見知りで、実はこのところ、毎朝のように顔を合わせている仲でもあった。
        といぅのも、こんな事があったからだ。
        それは、姫乃の父親.薰が再婚してまだ日が浅いある日のこと。
        つまり、姫乃が淡雪女学院の高等部に入学してまだ間もない頃のことだった。
        「まずったなあ。これじゃあ、完璧に遅刻だよお」
        引っ越して来たばかりで、まだ通学路に不案内。
        おまけに遅刻しそぅになって、姫乃は右往左往していた。
        義母の夏江は淡雪女学院の理事長でもある。その”娘”が遅刻するなんてわけにはいかないのだ。
        公園脇の街路樹づたいの道で、姫乃の頭上に男性の声がきれいに響いた。キョロキョロして見回したが、どこにも姿が見つからない。
        「ここだったら。君の真上見て」
        ふと見上げると、街路樹の上にその声の主がいた。
        銀色に光る髪をなびかせ、微笑む美少年。
        細だつた。
        「細、こんな木の上で何してんの?」
        「ここに登ると、言葉がぃろぃろ浮かぶんだ。DJで語るどきのいろんなフレーズがね」
        「ほんと、細って仕事熱心ね。こんな朝からずっと番組のこと考えてるんだ。
        「朝は特に、いいフレーズが浮かぶんだ」
        「ああ!いっけなーい。もっと話したいけど、あたし、遅刻しそっなの」
        「だから、言っただろ?近道あるって」
        「あ、そぅだった。近道って?」
        「この公園の林の中に細い道があって、それを抜けると女学院の校舎の裏手に出る。ちょっとわかりにくいけど、僕か木の上から見てナビゲーしてあげるよ。女の子一人で林の中を通るのは危なけど、僕かここから、見てるから大丈夫」
        「平気よ、何か出てきたら、空手チョップで撃退するから」
        さわさわと木の葉が擦れる音がする中、確かに細い道は先へ先へと統いていた。
        けれども枝葉がたわわに交錯して、猫一匹が通れるぐらぃの狭いところもあって、視界が遮られてしまう。
        とにかく姫乃は駆け抜けた。
        細のょく響く声を賴りにして「まつすぐまつすぐ、まだまだまつすぐだょ」
        そのナビゲートの甲斐あって、姬乃はかろぅじて、なんとか校舎の裏手にたどりっけた。始業べルにギリギリセーフで間に合ったのだ。
        以来、毎日のように遅刻しそうになつても、細のナビゲこのおかげで、いつも事無きを得ている。
        というか、公園の林の技け道が、もうすっかり' 姫乃の通学路になってしまったのだ。


        IP属地:广东4楼2019-08-13 10:49
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          P2:
          姫乃が遅刻するのは、だいたい繭根のいじわるが原因だ。
          たとえばこんなことがあった。
          朝、淡雪家の大広間でウェイ夕—やメイドにかしずかれながらの食事。
          正統派のイングリッシュ.ブレックファ—ストで、朝からいきなりすんごいごちそうなのだ。
          メインディッシュは、デパ地下の高級デリカで売られているようなお高いソーセージやべーコンのソテーと地鶏卵の目玉焼き。そこにポテトとトマトのオーブン焼きが添えてあつて、さらにこんがり焼けたトーストが、麻の白いクロスに包まれて、そっとメイドさんの手から差し出される。
          しかし,そんなシチュエ-ションは、それまで一間のアパ—トで父親と庶民的すぎる生活を送ってきた姫乃にとっては、堅苦しすぎて、いっこうにリラックスできないものだった。
          それに比べて、姫乃の義母である夏江はお育ちが違うらしく,慣れたもの。これでは足りないからと仔羊肉の香草焼で追加して食べたりもしていた。
          精力的に仕事をこなす女実業である夏江は,朝食をしっかり摂ることを身上としている。かの,マリリン・モンローもダイエットのために肉を食べるのは朝食のときだけと決めていて、仔羊を好んで食べたというから,こういう朝のリッチな食事は美容と若さを保つ秘訣なのかもしれない。
          もちろん、高校一年の姫乃としても,食いしん坊ぼうであるからして、おいしいごちそうには目がなぃ。
          こんな気取った雰囲気でなければ、そんでもってガツガツ食べてょければ、いくらだって胃に入っちゃうのにと、内心思っていた。
          そして、思った気持ちを素直に表わすタイプの姫乃としては、肩身の狭ぃ思いをしつつも、食欲のおもむくまま旺盛に食べているのだった。
          それは父親の薫とて同じ。
          そんな薫を見て、昔から薫のファンで心から彼に惚れている夏江は、微笑ましく思うのだった。
          だか一方、姫乃に向けられた夏江の視線は鋭く冷たいものがあった。
          けれども、姫乃は幸か不幸か気づいてはいなかった。
          繭根は、こんなにもごちそうが並んでいるにもかかわらず、ダイエツトと称して、フルーツサラダとミルクテイーしか飲まない。
          真綿もあまり口をつけずにさっさと朝食を済ましてしまう。
          「田中、車は?」
          「ご用意できておリます」
          食堂の隅に目立たないように 控えていた小柄で丸々とした体型の中年男が答えた。
          淡雪家の抱お運転手兼執事えの田中である。
          夏江は会社の会长室に顔を出すのが午前十時過ぎなので' 、その前にお嬢様たちを学校にお送りするのが、田中の朝一番の仕事なのである。
          (おっといけない'、ごちそうにかまけてる場合じゃない。学校に行かなくちゃ)
          姫乃は慌ててミルクテイーを飲み、フルーッ人りョーグルトをーをほぼ同時にかきこもぅとした瞬间、ヒジにしびねるような衝擊が走って、姫乃の顔面と制服がミルクティーとヨーグルトの混合物でばっちし汚れてしまったのだ。
          『姫乃さんたら慌てるから。ほ—ほほほほ」
          繭根は「みっともなぃ」と言いたげに高笑いしたが、姫乃のヒジに故意にぶつかってきたのは、明らかに繭根の方だった''
          『ドゾだなたあ』
          と父親の薰に言われたが、自分のせいじゃないとは言えず、飛んできて汚れを拭いてくれるメイドさんたちも、心の中では小バカにして笑ってるんだろうなと思うと、余計に気持ちがへこむ姬乃だつた。
          しかも,急いで着替えて飛び出してみると、待っててくれると信じて疑わなかった、繭根と真綿をせたリ厶ジン車は、すでに出発していたのだ。
          淡雪家の屋敷は、門まで出るのにちんたら歩けばゆうに五分、ダッシュでも一分はかかる。その上、学院までは結構な距離がある。
          まともに步いてなんかじゃあ、完全に遅刻する。
          それが、繭根の狙いだったのである。
          でも、抜け道を知ったおかげで、その後何度か(というかほぼ毎日のようにと言った方が正しいくらい)、繭根たちが故意に姫乃を置ぃてきぼりにしても、また不用意にも自業自得の朝寝坊きのまま飛び出そぅと、学校へは遲刻せずにセーフで滑り込むことができた。


          IP属地:广东5楼2019-08-13 10:49
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            P3:
            [本番前のリハーサルを行いまず]
            インカムを耳につけたジーンズ姿のディレクターの倉橋が、スタジオに響くょぅに一声を発した。
            緊張の一瞬。
            バラード調の静かな音楽に乗って細のDJが始まる。いつもの声で,いつもと同じ。まるでもうON・AIRが始まったかのように。
            ただ、今夜の放送は開局記念番組の特番である。
            いつもは、深夜のラジオの単独放送だけど、この日はテレビ番組とのコラボレーション。同時放送で、テレビでも「細のワーズ・ゲート」からの中継がON・AIRされるのだ。
            だから放送時間もゴールデンタイムのハ時スタートに繰り上がっている。
            テレビスタジオの方には、日本のビッグアーチストはもとより、海外のビッグスタ—もゲストで入っている。
            番組では彼等ゲストのライブ演奏やビデオクリップを紹介しながら、ラジオスタジオにつないで人気パーソナリティーの細とトークのやり取りがある。
            それが目玉。
            「姫乃、eーメールできたリスナーの投書はまだある?」
            と、リハーサルを終えた細が姫乃に問いかける。
            「はい、今プリントアウトして、控えめコピーもしであります」
            OK、上出来。FAXや封書で来た分もよろしくね」
            ボランティアス夕ツフとして働く姫乃め仕事は、「ワーズ・ゲー卜」の番組に寄せられる投書やリクエス卜を、細が目を通しやすいように整理しておくことだった。
            うん、うん、今日はなかなか、いい投書がいっぱい来でるな。どれを採用するか迷うな」
            ほんとですか
            「この子たち、姫乃くらいの年頃なんだろうな。悩み多き年頃だね。姫乃はどんな悩"みがあるの?
            「悩み?あると言えばあるけど、ないと言えばないのかな。のほほんと生きてるから」
            「そうはいうけど、姫乃だって、女の子だからね。心はガラスのように傷つきやすくて、繊細なんだよな。ホントはね」
            細はにこっと笑って言った。
            ドキッっとした。
            繊細で傷つきやすいなんてことを、あまり他人から言われたことがない姫乃だっにかぢ。
            小さいときから空手なんてやってるから、神経もずぶといやつだと思われがちなのだ。
            (さすが、人気DJと言われるだけあるな。細って、人の心の中がみえるんだ)
            「でも、心が傷ついても、それを癒せるのも自分だからね。いっぱい悩んで悩み抜くことで人は皆、魅力的な大人になっていくんだよ。見てくれだけじゃなくてさ、心がきれいな女の子って、いっぱい悩んで成長した子だよね。それが表情にも出るんだよ」
            「そうかあ。じゃあ、細もいっぱい悩んでるの?」
            え?」
            「あ、ほめたつもりで言ったんだけど
            "そう、はぐらかしたけど、細の持つ透明感あるきれいな表情は、きっと悩んで成長した、成果なめかな?と、姫乃は思ったのだった。
            「僕はいつも悩みを抱えてるよ。世の中の女の子悩みをね。こに胸にすべて……」
            細わそう言って胸に手を当ててォーバーなアクションをしてみせた。
            でも、細なりの照れ隠しなのかも、と姫乃お思った。
            確かに、自分の悩みを受け止めてくれる細みたいな男性がそばにいてくれたら、世の中の女の子はみんな幸せになれるのかもしれない。
            「おや、きれいな子がいるなあ」
            モニターを見ながら、ワーズ・ゲー卜の音響ミキサー担当の伊藤が声を上げた。
            モニターにはテレビスタジオが映し出されていた。
            カメラがスタジオ見学者席をとらえたところであり、そこに真綿の顔がアップになった。
            「あ、真綿ちゃんだ」
            姫乃が結構大きな声で叫んだので、皆がモニターを注目した。
            「君の知り合い?あ、同じ淡雪女学院の制服着てるもんな」
            とミキサー氏が言った。
            「妹なんです」
            「ええ?君の?全然似てないし、この子の方が大人っぽいじゃん」
            周りのスタッフたちが声を大にして言った。
            「妹はまだ中学生なんですけど」
            「うっそ!!」
            どよめきの声がまた起こった。
            血がつながってないから似てなくて当然だけど、モニター画面に映る真綿の姿は、そこいちのアイドルタレトなんぞ足元にも及ばないほど美しかった。
            「いやあ、こんなきれいな妹さんに会ってみたいなあ。
            「だめですよ。伊藤さん。相手はまた中学生ですからね。それに姫乃くんの妹さんてことは淡雪会長のお嬢さんってことだし……
            と、ディレクターの倉橋か伊藤を制した。
            「いけねえ。そうたった。姫乃くんだってお嬢様だったんだよな。本当はこんなとこるで働いてもらうのなんか、おそれ多いんだ。でも、姫乃くんは気さくだから」
            「伊藤こん、あたし、お嬢様なんかじゃないで。たまたま父が再婚した相手が夏江さんだったという力だけで……」
            お嬢様扱いされるのは、どうにしも苦手な姫乃なのだ。
            「妹の真綿さん、なんか淋しそうだな」
            モニターを見ていた細がぱつりと言った。
            あたしと性格違ってて、人見知りするから、…やっぱりこういう席は苦手なのかも。
            真綿は学院の中で憧れの存在だけど、ちやほやされたりするのが苦手なタイプ。むしろ嫌悪感さえ抱いている。
            真綿にアプローチする男の子もたくさんいるけど、全く無関心を装っている。
            そんな真綿だから、本当に心開いて話せる親友と呼べる友達はいないのかもしれない。
            もう少し心を開いて、仲良くできたら何の問題もないんだけどヽといつも姫乃は思っている。
            義姉妹というより、本当は友達として接してほしいのに。
            (それにしても、真綿ちゃんはなんで今日、スタジオの見学にきたんだろう?)
            モニターに映る真綿を見ながら、姫乃は改めて不思議に思った。
            淡雪女学院を代表して呼ばれて来たというのはわかるけれど、真綿の性格からいって、素直に引き受けるとは思えなかったからだ。
            その日の特番のスタジオ見学者は、インターネットで申し込んで抽選で当たった人の他に、淡雪タウンの企業や学校、公共施設などを代表して見学者が招待されるという形をとっていた。
            招待者は、インタビューされる確率も高い。だから目立ちたがり屋さん、積極的な人は向いている。
            でも、真綿は、才色兼備という点からいえば、淡雪女学院を代表するには申し分なく適してはいるけれど、真綿自身のキャラクターからいって、目立つとかそういうのは好まない。
            断ろうと思えば自分の意思をはっきり伝えて拒むこともできるのに、と姫乃はふと考えこんでしまった。


            IP属地:广东6楼2019-08-13 10:50
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              今天就更新到这里,明天继续,如果有亲会日语能翻译的也欢迎哦


              IP属地:广东7楼2019-08-13 10:53
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                でば、次のお便り紹介いしましょう。
                ガラス張りのブース内から、細の美声が響く。
                『ワ—ズ・グート』スペシャルの本番が始まった。
                ラジオとテレビの同時放送。
                ただし、テレビ画而では、細の手元や後ろ姿、口元だけがソフトフォーカスで映るだけ。
                あとは、細の声に聴き入るスタジオのギャラリーや、ゲストのスターたちの顔が映し出されていた。
                「では紹介しましょう。中学二年生、Mさんからのお便り……こんな悩みがあるんた」
                《わたしは、人からは幸せだと思われています。
                羨ましがられてもいます。
                それは、ほしいものは何でも手に入るし、
                ちやほやしてもらえるし、
                望むことはたいてい、どんなことでも、叶えてもらえるからです。
                でも、本当は苦しいんです。
                本当の自分の気持ちが伝わらないから》
                それに対して、細の声はこう語った。
                『君は美人で、きっと頭もいいんだろうな。悩んではいるけど、頭のいい君は、もう达えも実はわかってたりして……」
                そして即興の音楽に乗せてさらに語っていった。
                《君の周りに噂が渦巻く。
                満ち足りた生活。
                だけど、本当にほしいもの。
                それは別のもの。
                ほしいものがある。
                でもまだ出会えない。
                いつ見つかるか、わからない。
                だけど、信じて。
                明日を信じて。
                君が見つけなければ、本当にほしいものは手に入らない。
                勇気を持って、手を伸ばしてみなくちゃ。
                自分からつかまなくちゃ》
                なんて素敵なメッセージだろう!
                姫乃もつい作業の手が止まるほど、細の言葉に聴き入ってしまった。
                いいねえ、いいねえ。今日も乘ってるね、細は」
                ディレクターの倉橋もご機嫌で感心しきっている。
                コンピューグーには新着のメールが届くインジケー夕ーが光る。
                クリックすると、今の細のメッセージに感動したというメールが続々と届いていた。
                すごい反響の早さ!
                姫乃は改めて細のDJとしてのパワーを実感した。
                それにしても、投書してきたのはどんな子だろう?
                満ち足りた生活。きっと家はお金持ちで、美人で頭よくて……
                イニシャルはM……
                うん?それって繭根?
                まさか、繭根は悩まない。
                うん?M……ってまさか……
                真綿ちゃん?
                真綿ちゃんてワーズ・ゲートのファンだって繭根が言ってたし。
                もしかして、今日、真綿が局に来たのも、細に会いたかったからとか?
                そう思うと合点がいく。
                よし、インターバルだ。細、休憩とって」
                ディレクターの倉橋がブースの中に呼びかけた。
                放送はテレビスタジオからのライブ演奏に切り替わり、ラジオでも同じサウンドが流れている。
                「あれ、あのきれいなコ、どこいっちゃったんだろうね?」
                モニターを見ていたミキサーの伊藤が指摘した。
                スタジオの見学席が映し出されたが、さっきまで真綿がすわっていた席に彼女の姿がない。
                たしかにさっきはしっかりと映っていこのこ。
                「あ、ここから先は関係者以外の人は入れないんですよ」
                と、そのときスタッフの一人がスタジオの入り口付近で、谁かを制する声が聞こえた。
                細のスタジオは、ATBのスタッフであっても番組部外者は立ち入りを許されていない。
                それなのに誰が入って来たんだろう、と思ったとき、姫乃はある予感がした。
                「真綿ちやん!?」
                だが、真綿ではなかった。
                「おうおう、ここかあ、細とかいう覆面DJがしゃべってるスタジオは?」
                そこに立っているのは、ゴン太郎だった。
                誰でも知ってるビッグなタレント。
                もともとはお笑い出身なんだけど、シリアスなドラマに出演して、役者としても高く評価されている。小説も書くし、絵も描く。映画監督もなんでもこなし、マルチに活躍している。
                芸能界では帝王のような存在だ。
                この業界では彼のわがままは何でも通り、みんな彼の意見に従う風潮がある。
                「これはこれは、ゴン太郎さん」
                白髪頭の中年プロデューサー・猪野が、細のいるスタジオから飛び出してきた。
                「よお、なんだ、猪野っち。お前がこの番組仕切ってんのか?だったら細に会わせろよな」
                ゴン太郎は酔っていた。
                酒癖が悪いのだ。
                それだけは、勘弁してください。細は誰にも顔を明かさないというのがウリなもんですから。
                だからと言ってこの南ゴン太郎様に挨拶がないなんてのは、ちとおかしいぜ。今日外国から来た、プラビっての、ちょいと俺に似たいい男な、あんな大スターでも、俺んところに挨拶に来たぜ。そんな、顔みせねえなんてナマ言ってる場合じゃねえ。せっかく開局記念番組なんだから、この機会に顔出しして、正体ばらしちゃうの!そうすりゃあ、もっとテレビも視聴率、稼げるし、細ってやつももっとスターになれるっちゅーの」
                ゴン太郎は頑として引き下がらなかった。
                白髪頭の猪野プロデューサーは、困り果てた。
                ゴン太郎を怒らしてしまっては、今後業界での仕事がやりにくくなる。
                かといって、細の素顔は限られたスタッフ以外絶対に見せないという固い約束がある。
                虽说如此,但是细的真实面孔也是有合同约定约束的,只有有限的工作人员才能看到。
                とちらを取るべきか?
                「ゴン太郎さん、ここは関係者以外立ち入り禁止になってるんです。お引き取り願えますか?」
                銀色に光る髪をなびかせた細が、ゴン太郎の前に現われた。
                「お前誰?」
                「ディレクターの細川です」
                自分がだとは名乗らなかった。
                「ディレクター?お前なんかに用はない。細を出せ!DJの細を。あいつは俺に会う義務がある。
                ゴン太郎はかなり泥酔していた。
                「細は言葉だけで仕事しているんです。彼に顔は必要ないんですよ。だから、たとえ貴方が大スターだとしても、会う義務などないんです」
                「ほう、細川とかいったな。若造の分際で俺に逆らうなんていい根性してるな。お前もそうだが、細とやらも、この業界で仕事できないようにしてやるからな」
                「そんなことできますかね。細を必要としているリスナーがいる限り細は不滅ですよ」
                「なにを、この野郎生意気な」
                おりゃああ!
                どすつ!
                「いててててえ……」
                芸能界の帝王ゴン太郎が、投げ飛ばされた。
                投げ飛ばしたのは姫乃だ。
                床に伸びたまま、ゴン太郎は起き上がることもなく静かになった。
                「やばい!」
                プロデューサーの猪野は一瞬顔面蒼白になった。
                「大丈夫です。気を失って寝てるだけですから」
                姫乃が言うように、ゴン太郎は寝息をかき出した。
                よほど酔いが回ったのだろう。
                「目が醒めるまで放っておくか?」
                「目が醒めたら何も覚えてないかも」
                「そうだね」
                「でも、細、かっこよかった。細川ディレクターは言いました。『細は言葉だけで仕事しているんです」『細を必要としているリスナーがいる限り細は不滅てす」か」
                「姫乃もかっこよかったよ。だてに邪道会館流空手道黒帯ってわけじゃないんだよな」
                (本当はもっと女の子らしいところで誉めてもらいたいけれど……ま、みんなが憧れてる細に誉められただけでもよしとするか)
                「あら、姫乃さん……」
                振り返るとそこに、淡雪真綿の姿があった。
                真綿は、スタジオにいた姫乃の姿にいたく驚いたようだった。
                真綿ちゃん! 真綿ちゃんたら、テレビのスタジオ戻らなくていいの?淡雪女学院代表で来たんでしょ。いなくなったらまずいんじゃないの?」
                『退屈で飽きたから出てきたの。代わりもちゃんといるし」
                と、真綿ま、いつものクールな口調で通路にもあるモニターを差して言った。
                そこにはなんと、ゴージャス・才ーラをふりまいてひときわ目立っている繭根の姿か映ていた。
                「真綿さん、細の番組よく聴いてくれてるのかな?」
                細が声をかけた。
                「あなたは?」
                「あ、ディレクターの細川さん、この番組の……」
                慌てて姫乃は細のことを、ディレクターだと紹介した。
                「スタジオ見学していきますか?」
                「え?」
                細の言葉に一瞬、真綿の顔が明るくなった。
                「といってもブースの中の細には会わせられないけど」
                「あ…、それは、別に……」
                真綿はまた元のクールな表情に戻った。
                「それより姫乃さん、どうしてここに?
                「空手の上手い人をボランティアでお願いしてるんだ。ほら、あんなふうに招かれざる客があったりするもんだから
                と、細は床に伸びているゴン太郎を指して言った。
                丨ねえ、真綿ちゃん、テレビのスタジオ抜けたのって、もしかして、細に会いに来た?もしかしてさっき放送になった投書のMさんて真綿ちゃん?
                「ま、まさか。知らないわ。わたしはただ、帰ろうと思っただけ。その前にお母様のところへ寄ろうかと。会長室はこの最上階にめるって聞いてたから。
                姫乃の問いかけをめっさり否定して、真綿はぷいっときびすを返して、その場から立ち去って行った。
                だが、姫乃は確信した。
                真綿が、局に来た目的はもとからきっと細に会いたかったのだろう。
                あの投書も間違いなく真綿だろう
                投書加採用されて、細にメッセージをもらったから、いてもたってもいられず、テレビのスタジォを抜け出して、細のスタジオを探してきたのだろう。
                ファンなんだから、細をちゃんと紹介するべきだったかも、と姫乃はちょっと後侮した。
                だって、真綿ちゃんは、あたしの妹なんだから)
                確かに、真綿は素直じゃない。
                姫乃の姿を見て意固地になったような気さえする。
                細に紹介したところで、真綿の姫乃にたいする気持ちがほぐれるかというと、その自信はない。
                真綿は実の姉、繭根に対してもクールで、自分以外の誰をも認めないような雰囲気をもっているからだ。
                そねでも、細の番組を聴いて、細に悩みを書いて投書してきた。
                しかも苦しいという胸のうちを飾らずに告白して
                そう思うと姫乃の心も複雑だった。
                「真綿さんて、きれいだけど、あの淋しい表情をなくせるものって何ヵな?」
                細がぽつりと言った。
                「だけど、本当にほしいもの。それは別のもの。ほしいものがある。でもまだ出会えない。いつ見つかるか、わからない。だけど、信じて。明日を信じて。君が見つけなければ、本当にほしいものは手に入らない。勇気を持って、手を伸ばしてみなくちゃ。自分からつかまなくちや」
                「細……」
                「これは真綿さんと、そして姫乃にも伝えたいメッセージだな
                そういって細は、スタジオのブースの中に消えて行った。


                IP属地:广东8楼2019-08-14 10:24
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                  ATE開局記念のお祭りは無事にその一日を終えた。
                  「あー、まだ五分寝てたいよー」
                  あくる日の朝はさすがに起きるのがつらい姫乃だった。
                  夜ハ時からの放送で「ワーズ・ゲー卜」の特番は十時には終了したものの、片付けやなにやかやで、家に帰ったのは十一時を過きていた。
                  当然、ボランティアスタッフの姫乃にもタクシー券が配られて、ちゃんと家の前まで送ってもらえた。
                  ただ、夏江は当然だが、繭根も真綿も黒塗りのリムジンで家まで送られてきたのに、姫乃は他のスタッフ数人が乗りあうタクシーという差がついていた。
                  しかし、淡雪家の朝食は定刻通り、いつもと変わらずリッチな食卓で始まっていた。
                  「繭根ちゃん、テレビでひときわ目立ってきれいだったね」
                  一日中にいて、記念番組をみていたという父、淡雪薫の感想だった。
                  真綿ったら' 急に気分が悪くなったって、わたくしの携帯に電話よこすんですもの。偶然、近くにいたからよかったけど。お母様、やっぱり、テレビ出演はわたくしがむいてますでいよう。
                  真綿、今朝は気分はいいの」
                  ええ、お母様、ご心配おかけしました」
                  相変わらず真綿はクールだな、と姫乃は思った。
                  「それは、そうと' 姫乃さん、ボランティアスタッフなさってたそうね。働いてくださったことは感謝しますけど、事前にわたくしに言ってもらわないと。淡雪家の人間をスタッフとして働かせているのをオーナーのわたくしが知らなかったといいうのは、ちょっと体裁もありますからね
                  あ、すみません。裏方の目立たない仕事だから……お母様に言うほどのこもでも……と思って」
                  とにかく、何でも、うちの企業と関わることは、默ってやらないように。これからはくれぐれも気をつけて」
                  夏江の口調はあくまでも厳しかった。
                  「そうだよ、姫乃の勝手な行動がお母さんの迷惑になることもあるからね。自覚をもとうね、姫乃」
                  父・薫の口調は優しかったが、しかし、姫乃にとっては辛い語調に聞こえた。
                  「で、姫乃、細には会えたの?どんな顔してるの? ハンサム?」
                  繭根が矢つぎ早に質問してきた。
                  「ぜーんぜん。ボランティアのあたしなんかスタッフルームで仕事するだけで、本人なんかに近づける状況じゃなくって」
                  「なんだ。そう。ま、そうでしょうね。一介のボランティアスタッフのコになんか会うわけないもんね」
                  这样子啊,不过也对,你只是一个志愿工作者怎么可能见到他呢?
                  繭根は、姫乃の言葉にあっさり納得していた。
                  そのとき真綿の方にもちらりと視線を送った姫乃は、ふと安堵の表情をもらした真綿のうつむき加減の顔を見逃さなかった。
                  やっぽり、真綿ちゃんて、細のファンなんだ。何事にも、誰にも興味ないみたいな真綿ちゃんんだけど、やっぱりふつうの女の子なんだ。ちょっとホッとした感じ。それにしても、細のパワーもすごい。誰の心でも開いちやうんだから)
                  「ねえ、お母様。こんど、細に会わせてくださらない」
                  繭根は母,夏江に甘えた声で賴んだ。
                  「繭根、あなたには、ハリウッドの俳優さんたちを囲むレセプションに連れていこうと思っていたけど、庶民が騒ぐよぅなDJに会いたいというのね」
                  「あ、いえ、お毋様、わたくしにはハリウッドのスターの方たちのほぅが....細とかいうDJには興味ございませんもの。ただ、真綿がフアンみたいだから、一度家にでもお招きすればと思って」
                  「あら、真綿そうなの?」
                  「いえ、お母様、わたし、興味ないですから」
                  そう言うと、真綿はすっと席を立った。
                  「繭根、そろそろ時間でしょ」
                  「そうだったわ、田中!車を」
                  「あ、繭根お嬢様、お花が届いておりますが」
                  運転手の田中が大きな花束を抱えてやって来た。
                  「繭根お嬢様のフアンの方からのようですよ」
                  「あらいやだわ、テレビに出るとすぐこうなんだから」
                  メツセージカードガついてます
                  読んで
                  「山田春男より」ゅぅずぅ
                  「山田……誰?ぁぁ、ぁの融通のきかない警備員!にがぉ、
                  ATBの正面玄関で絶対繭根を顔パスさせなかった蟹顔の男だ。
                  「ぁあ、あの瞀備員さんですよ。奥様、昨日ATBの玄関に配備されていた。わたくしが聞いたところでは、世界警備員コンクールで優勝経験もある優秀な警備員とか」
                  「あら、そうなの」
                  哎呀,是吗?
                  「興味ないわ、田中。あ、お花は姫乃にあげるわ。手入れがお上手だから」
                  そう言うと、繭根は、真綿とともにそそくさと出かけていった。
                  「姫乃、遅れるよ」
                  ひとり、悠長に朝食をとっている姫乃に、薰は心配そうに声をかけた。
                  「いいの、あたしは、近道知ってるから」
                  リムジンに乗るより、林の裏道を通り抜ける方がすっかり性にあってしまった姫乃の姿がそこにぁった。
                  第一章完结


                  IP属地:广东9楼2019-08-14 10:25
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                    第二章:招かれざる客
                    チチチチ
                    小鳥がさえずる。
                    部屋に射し込む淡い陽光を感じて、姫乃はふかふかのベッドの中で、心地よいまどろみの境界線を行き来していた。
                    今日は、日曜日。
                    もう少し眠っていても大丈夫……
                    (ああ、でも、そろそろ起きよう。お花に水やらないとね)
                    と、姫乃が目を開けようとしたとき、バルコニーの扉がパタンと揺れた。
                    (誰?人影が!)
                    ガラスの扉のむこうには、長い髪の毛を束ねだエプロン姿の女性の影があった。
                    (メイドの美景さん?じゃないなあ……誰だろう……)
                    「あら、姫乃ちゃん、起きたの?」
                    「ママ!」
                    バルコニーで、鉢植えに水をやっていたのは姫乃の母親だつた。
                    ママ、ごあん。自分でやろうと思ってたんだけど。ついつい寝過ごしちゃって
                    はい、じゃあ、ここからは姫乃にお願いするわ选ね
                    と、やさしく微笑んで母親は姫乃にじょぅろを渡した。
                    あ、重っ……
                    じょぅろが重く、受け取った姫乃はバランスを崩してよろけそうになった。
                    いっけないん;
                    じょぅろか傾いて、中の水がバシャっともろに母親のエプロンにかかってしまった。
                    あらあら、姫乃にはちよっと重かったみたいね」
                    こめんなさい。“ママのエプロン
                    「大丈夫。いいわ天気たもの。すぐに乾くわ。きっとエプロンさんも、喉が渇いていたから、うれしいのかも。さあさ、じょぅろにまた水汲んでこようね」
                    うん
                    水をこぱしたというのに, 母親は叱ることもなく、優しかった。
                    姫乃は,母親のエプロンのひものところに、くっつくようにして、バスルー厶こ入っていこうとした。
                    “あれ、あたし……?
                    そのと、自分の目の高さが妙に低くなっていることに気がついた。
                    姫乃はまだ幼い子供だった”
                    〈ああ、だからじょうろがやけに大きくて重く感じたんだ
                    そうか、子供のころに逆戻りしたんだ。
                    でり、この家は?
                    フランスの貴族が住んでる領主の館のようなこの家はこんな……こんなすごいお屋敷に住めるようになったのは?
                    それは多分、パパのお仕事がうまくいったからだろう、と姫乃は思った。
                    姬乃の父親はアーテイスト。小説を書いたり彫刻を彫ったり、いろんな創作活動をしている。
                    (そうそう、パパの書いた少女小説がベストセラーになったのよね!だから、こんな御殿が建てられちゃったんだ)
                    幸せだな、と姬乃は思った。
                    お城のような家で、優しい母親と植木に水をやって、きれいな花を育てる喜び
                    まだ、小さいから、学校にも行かなくていいし……
                    そうだ!こんな天気のいい日曜は、部屋の中にいるのはもったいない。
                    パパとママと三人で広いお庭を散步しよう。
                    お弁当を作ってビクニック気分で。
                    われ、そう言えば、パパはどこ?)
                    ばたん
                    洗面室のドアが開いた
                    あれ、何ここは?
                    アパートの共同トイレだ。
                    振り返るとさっきまであったはずのお屋敷の部屋はすっかりなくなっている。
                    ボロアパートなんだけど掃除だけは行き届いていて、妙に懐かしい
                    (そうそう、ここにはお風呂がないから、近くの銭湯に行くんたよね)
                    と、姬乃はそこが自分がかつて住んでいたアパ—トだったことを思い出した"
                    ふと見ると、窓はひびわれたガラス。カーテンにもツギあてがあって、こわれ雨樋がぶらさがってるのが窓枠を通して見える。
                    「ああ、お父さんたら、またお酒飲んでる」
                    ささくれた黄ばんだ畳の上に敷かれた万年床にくるまるようにして、そこに姫乃の父親の後ろ姿があった。
                    そうなのだ、父親はかつてはベストセラーを出したものの、今はその勢いもなく、売れない小説家になってしまっている。
                    姫乃の目を盗んでは、ウイスキーをコップについで飲もうとする父親。お金もないのに、いったいどこから手に入れてくるんだろう。
                    もう、朝っぱらからお酒なんか、飲んでないで、ちゃんとごはん食べてよ。少ない生活費でやりくしながらも、ちゃんと栄養とか考えてつくってるんだから」
                    半分酔っ払っている父親を引きずるようにしてちゃぶ台の方に引っぱろうとする姫乃は、ふと、自分が成長して中学生になっていることに気づいた。
                    「ママが亡くなってから、お父さん、気力なくしたんだよね……わかるけど……さあ)
                    と、お酒に逃げてる父を思うと、やはりやるせないものがある姫乃であった。
                    「ごはん作ってくれたんだ。ありがたいね。よし、いただきます
                    一瞬神妙に、真面目な顔になった父親は、姫乃が作った朝食に箸をつナようとした。
                    か、そのとき、ひび割れた窓が破れそうになるくらいの轟音が頭上に旺鳴った。
                    バリバリバリバリバり!!!!!
                    「ぎゃあ!戦闘機!」
                    見ると窓のすぐ外に、「ラジャー」と不敵な笑みを浮かべ、髪の毛を思いっきりうずたかく卷き上げた女性の顔が大アップになった戦闘機が出現した。
                    い、いや、もうすでに窓を打ち破って部屋の中間まで先端が入って来ている。
                    (な、夏江さん。お義母様だ!)
                    薫さん、朝食の用意ができましてよ。まあ、そんなしみったれた庶民の食事なんか、薫さんには食べさせられませんわ。さあ、早く、参りましょう。今朝は西太后も食べたという満漢全席を取り入れたヘルシーチャイニーズですのよ」
                    そう言って、戦闘機の操縦席からお上品に叫んだのは、父の薫が再婚した相手、夏江だった。
                    (そうだ、お父さんは、昔から小説の大ファンだったという大金持ちの夏江さんと結婚したんだった。ってことは、 こんなアパートにいるのは?
                    姫乃の頭の中では時系列がぐちゃぐちゃになりはじめていた。
                    再婚した時点で姫乃を連れて、夏江さんのお屋敷に引っ越したんだった。
                    パリパリバリバリバリッ!
                    気がつくと、父親の薫は、戦闘機の先端にまたがるようにして、しがみつき、操縦席の夏江としっかり手を握り合いながら、空高く飛んで行った。
                    一人取り残された姫乃……
                    (あれ、あたしは?満漩全席の朝ご飯は?おーい、なんであたしはおいてきぼりなの!)
                    だが、姫乃の叫び声も戦闘機の音にかき消されてしまった。
                    頭上には戦闘機の轟音が虚しく響くだけで、それもだんだんと小さくなっていった。
                    完全に、割れたガラス窓から、冷たい風がぴゅーと吹く。
                    まるで、姫乃を小バカにしたように。
                    パタパタパタパタ、パタパタパタパタ……
                    すると、今度はまた、空にプロペラの音が旋回しはじめた。
                    見上げるとヘリコプターから縄ばしごが、するすると下りてきた。
                    そして、誰かが縄ばしごを伝ってこっちにやってくる。
                    風になびく髪。
                    おーい、姫乃〜っ!早くしろ」
                    「颯!?.」
                    手を差し伸べるその若者は、颯だった。
                    助けに來てくれたんだ?
                    助けに來た?何寝ぼけたこと言ってるんだか。引っ越しだろ、引っ越し。
                    「え?」
                    今日は、新しい家族が待ってるあのお城のようなお屋敷に引っ越すんだろ?」
                    そうか,今日が引っ越しだったんだ。でも、あたしまだ、何にも荷造りしてないんだけど」
                    大丈夫さ、アパートの部屋ごと、へりで引つ張っていくから」
                    「ええ!? 」
                    ふと見ると、アパ—トは傾きかけていて、外壁は縄でぐるぐる卷きにされていた。
                    はしごを伝ってドりてきた颯が、大きな手をぐいと伸ばし、アパートに巻かれた縄をんずとつかむと、アパートは地面から浮き上がった。
                    そして、部屋にいる姫乃ともども、どんどん上昇していった。
                    (うっそ〜つ!アパートごと引っ越すなんて、そんな馬鹿な......)


                    IP属地:广东10楼2019-08-14 10:30
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                      「お嬢様、姫乃さま。おめざをお持ちいたしました」
                      ぼやけたフォーカスが次第にはっきりしてくると、そこにはメイド姿の美景の顔があった。
                      (ああ、そうか夢見てたんだ
                      バルコニーに亡くなった母かいたのも、バスルームのドアの向こうに、昔住んでいたオンボロアパートがあったのも、戦闘機でアーノルド・シュワルツェネッガーみたいに義母夏江が突撃して父親の薫を連れ去っていったのも、そして、長い髪をなびかせた颯がやってきて、ヘリコプターでアパートごと引っ越していったのも、みんな夢の中の出来事だったのた。
                      高い天井。中央に吊されたベネチアングラスのシャンデリア。
                      ヨーロピアンスタイルの出窓の窓辺と庭に張り出したゴージャスなバルコニー。
                      バルコニーからは春の風が吹き込んで力ーテンをゆらしている。
                      そう、この光景は現実。
                      夢のようなリッチな暮らしこそが!
                      「ありがとう。いただきます」
                      姫乃ははっとわれに返り、慌てたように上半身を起こすと、美景が銀製のトレーをベッドの羽根ぶとんの上にそっと置いた。
                      そこにはしぼりたてのフレッシュオレンジジュースとキウイ、マンゴ、パパイヤなどのカットフルーッの盛り合わせがあった。
                      淡雪家の休日の朝は、それぞれの部屋にメイドさんが”おめざ”を持ってやってくることから始まる。
                      平日と違って朝寝坊できる休日は、朝食は各自の部屋で軽いルームサービスで済ませるというわけだ。
                      「姫乃さま、本日の昼食のときのお召しものは、こちらにご用意しておきました。
                      ふっかりとしたラブチェアー型のソファーにそっと置かれたドレスは、ピンクを基調にした柔らかで光沢のめるプリンセスラインのワンピース。胸のラインとカートの裾にフリルがあしらってある。
                      淡雪デザイナーズ・コレクションのこの春の新作だそうですね。きっとお似合いですよ
                      と美景がワンピースを手にとって見せた
                      淡雪デザイナーズ・ブランドとは夏江が主宰するファッション・コンテストで優秀と認められた作品を製品化したいわは夏江好みのコレクション。
                      新人デザイナーはもとより、世界のべテランデザイナーも出品することでステイタスは高い。
                      昨今は、ハリウッドの女優も淡雪コレクションを好んで着ることが多く、その影響と、夏江のライフスタイルに憧れる女性が多いことを反映して、この頃は特定のデザイナーズ・ブランドよりも淡雪コレクションを選ぶことが流行している。
                      さて、ソファーの下には同系色のローヒールのパンプス、コーヒーテ—ブルの上には、アクセサリーやカチューシャなども用意されている。
                      いたれりつくせりだ。
                      お昼の会食は、びったり十二時半から始めたいと奥様がおっしゃってましたので、五分前には支度を終えておいてくださいませ。お時間になりましたらお迎えに上がります」
                      夫人说中午的聚餐正好是从十二点半开始的,所以请提前五分钟做好准备。到时间我去接您。
                      そう言って美景は深々と一礼し、部屋から下がっていた。
                      这样说着,美景深深地鞠了一躬,从房间里退下了。
                      シャワーを浴びると、だんだん頭がすっきりしてきた。
                      冲过澡之后,头脑渐渐清醒了。
                      寝起きの瞬間から、しばらくはぽうっとしていて、夢と現実の境目があいまいになっているからだ。
                      それにしてし、贅沢よね。
                      この家には、家族一人に一つずつ浴室がある。姫乃の部屋には姫乃専用の。
                      今まで近くの銭湯に通っていた生活とは百八十度違う夢のような生活。
                      でも、これが現実。
                      シャワーを浴びながら、姫乃は今日の昼食のことを考えていた。
                      淡雪家では、平日のリッチな朝食もさることながら、驚かされるのが休日のゴージャスな昼食。
                      まるで宫中晚餐会みたいだからだ!
                      休日には、しばしぱ義母夏江の仕事関係、社交関係の大切なお客様が招かれる。
                      夏江がひいきにしているという著名なバイオリニストとか、オぺラ歌手、俳優、サッカー選手、F1ドライバー、ノーベル賞学者、それから有力な政治家とか、ヨーロッバの貴族とかエトセトラ、エトセトラ.....
                      まだ、姫乃は会ったことはないけれど、某国の王様ご夫妻だって、この屋敷にお忍びで来たことがあるというのだから、驚いてしまう。
                      とにかく、国の内外を問わず、VIPが毎週のようにやって来るのだ。
                      だが、この家に越してきて日が浅い姫乃は、このようなシチュエーションにまた慣れていない。
                      だいたい、かしこまったマナーというものがよくわかってない
                      見よう見まねでなんとかしのいでいる。
                      とはいえ、料理は一流だから、それだけは素直に楽しめる。
                      思わず、「おいしい!これ!」と感嘆の声を上げたくなるくらいだ。
                      本当は気取らずにわいわい食べられたら、どんなに楽しいだろうと思うのだった。
                      (それにしても、今日の昼食会はいつにも増して気が重いのよね)
                      シャンプーしながら姫乃は、次第にブルーになる自分を感じた。
                      というのも、今日は、年に一度の「淡雪家邸宅一般公開日」だからだ。


                      IP属地:广东11楼2019-08-15 13:28
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                        一般公開、つまり、フランス貴族の館のょぅな淡雪家の敷地内を見学客に開放するのだ。
                        邸宅は個人の所有物ではあるけれど、淡雪タウンでは公人的な立場にあるということで、昔から一年に一度は公開するのが慣わしになっていた。
                        しかも、この屋敷は単にリッチに造られているというだけでなく、いろいろな見所がある。建物はヨーロピアンスタイルで、メインの庭園も、まるでベルサイユ宮殿並み。
                        そんな広い庭を歩くのは疲れるので、この家で育った夏江の娘、繭根と真綿はいつも馬車で移動している、それこそ、シンデレラ姫が乗るようなおとぎ話に出てくるような馬車で、昔から懇意にしているフランスの子爵様からの贈り物だという。
                        しかしこれで驚いていてはいけない。
                        屋敷の奥の高台には、京都の観光名所のお寺のような日本庭園があって、離宮と呼はれる日本家屋がある
                        『そこではしばしばお茶会が開かれたり、能・狂言役者が呼ばれて観劇会など催されるのた。
                        「日本庭園の移動には、西洋の馬車が似合わないので、昔の大名行列に使われた籠が行き来する。
                        ヨーロッパ風のティストがお気に入りの繭根とは対照的に、妹の真綿は日本庭園のある離宮を気に入っていて、そこで得意の日本舞踊を舞ったりするのだ。
                        とにかくスケールが並外れている。
                        もっと驚かされることに、この敷地内には、考古学上でも注目されている古墳があったり、世界のUFO研究者が調査に意欲を燃やしているミステリーサークルもあれば、いまどこ謎が解明されない百穴とか、手付かずの遺跡などがあるのだ。
                        個人の私有地にこんな興味深い”覓所”があるのも、この一般公開の日の目玉となっているのだ
                        ただし一般公開といっても住居になっている建物の中は、別。
                        プライバシーや、防犯上の問題もあるので、ダイニングルー厶や応接室などの一部が、ごく限られたVIPの招待客のみに見学させる以外は、庭园に大きなワイドスクリーンテレビを設置して、テレビ番組の「お宅拝見風」に中継される。
                        もちろん、一般公開といえども入場者は抽選で人数制限されているので、このイベントは抽選に漏れた人々も楽しめるようにATBテレビやインターネツトのホームページを通じて広く放送される。つまり誰でも見られるわけだ。
                        だから、今日のお昼の食事の様子もテレビ中継されてしまうのだ。
                        お嬢様として育てられた繭根や真綿は小さいころから慣れているけど、姫乃と薰は初めてのことだけに、昨日は、マナーの特訓であけくれた。
                        ナイフとフォークは、外側から順にお使いになってね。それから、食事の途中ではナイフ・フォークはハのの字において、終わったらそろえて置くと下げてくれますからね」
                        夏江がじきじきに指導してくれた。
                        テレビ中編か入るとなると、一人一人の手元が映ることもある。
                        食卓の末席で適当にごまかしていたこれまではよかったが、淡雪家の人間が、ナイフ・フォークをスマートに扱えないというのは、確かに体裁上よくない。
                        カチャン、と小さな音がして、ヒレ肉の小片が床に飛んだ。
                        いっけない。失敗しちゃった」
                        姫乃が慌てて床に落ちた肉を拾おうとすると。
                        「お嬢様、それは私がいたしますので」
                        と、ウエイターがすっ飛んで来て、肉片を白いナプキンにさっと包んで拾い上げた。
                        姫乃さん、たとえそそうしても、平然としていなさい。たとえゲラスを倒して水をこぼしても、ウェイターやメイドがちゃんとやってくれますから。でもね。そういうところがテレヒに映るとみっともないから、明日はお気をつけになってね」
                        「はい、すみません。お義母様」
                        「夏江さん。TVカメラが入るとなるといつも以上に緊張しますね。箸でだったらうまく食べられるんだけど」
                        薫も、自信なさげに言った。
                        「あら、薫さんはとてもスマートに食べていらっしゃるわ」
                        夏江は優しく言葉をかけた。最愛の夫には甘いのである。
                        「でも私は夏江さんに恥をかかせたくないし」
                        「そうね、だったらフランス料理はやめましょう。料理長を呼んで!中華料理のフルコースに変更するわ」
                        夏江のツルの一声で、急遽メニューは全取っかえとなった。
                        「かしこまりました。では、明日は中国の満漢全席をアレンジしたゴージャスなメニューにいたしましょう」
                        料理長も動じなかった。
                        この家に雇われている料理人は一流どころだけに、どんな注文にもすみやかに対応してくれるのだ。
                        今朝の起きがけ、姫乃の夢に満漢全席の言葉が出てきたのも、昨日のリハーサルのことが印象に强かったからだろう。
                        しかし、この家のことはのことは、すべて夏江の独断で決められていく。その決定権は絶対のものなのた。
                        というのも、夏江は名実ともにこの街の女王だからだ。


                        IP属地:广东12楼2019-08-15 13:29
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                          この街は、日本有数の財閥の家系「北条家」が所有する土地に作られ発展した街。昔はずっと「北条シティ」と呼ばれていた。
                          夏江はこの家に嫁いできたのだけど、実家が北条家と並ぶ名家であって、幼いときから北条家の嫁になることを前提として、帝王学をみっちり教育されて大きくなった。
                          だから、未亡人となっても、北条コンツェルンの総帥として堂々と振る舞うことができ、しかも、ゲループ全体の事業をさらに拡大・発展させるという実力まで発揮したのご。
                          夏江が再婚し、淡雪を名乗ることになったのをきっかけに、北条シティのすべての名称を淡雪に一括変换してしまったのも、そんな夏江だからできたことなのだ。
                          街の名は「北条シティ」から今は「淡雪タウン」に。駅の名も淡雪駅、銀行も病院もそして姫乃が通っている学校の名前もみな淡雪ナントカになってしまった。
                          夏江はやることが大胆。
                          けれとも、知的で美しく、振る舞いも上品で、人望も厚い。
                          ただ.夏江は喜怒哀楽という感情をあまりあらわにはしない。普段はむしろ、冷静を通り超して冷淡にさえ見える。何事にも厳しく妥協もしない。
                          だが、唯一の例外は、再婚相手である淡雪薫への思いだった。
                          高校時代から淡雪薫の書く少女小説の大ファンだったという夏江は、結婚して生まれた娘に薫の小説「ツイン・プリンセス」に登場する二人の主人公、繭根と真綿という名前をつけたというのはよく知られている話。
                          そして、夏江が薰とめでたく再婚できたとき、初めて心からの笑顔を見せたと、言われている。
                          確かに、薫といるときの夏江の表情は優しい。
                          (でも、お義母様はあたしに対しては厳しい。まあ、仕方ないかな。なさぬ仲だもんね)
                          辛く当たったり、陰にまわって陰湿な仕打ちをするとか、そういうこわい継母ではない。ちゃんと「薫さんの娘」ということでは認めてくれてるわけだし
                          (ま、そこいらへんはうまくやっていかないと)
                          と思う姫乃であった。


                          IP属地:广东13楼2019-08-15 13:29
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                            ガタンと部屋の扉が乱暴に開く音がした。
                            誰?美景さん
                            でも、美景だったら、もっとていねいにノックする。
                            「うそ!」
                            シャンプーした髪の毛を乾かすドライヤーの音にかき消されながらも、そのとき寝室の方で誰かがくしゃみをする音を姫乃は聞き逃さなかった。
                            それも、男の声だ!
                            ふかふかのバスローブ姿のまま、慌ててバスルームから飛び出ると、そここは長身の男がつっ立っていた。
                            この部屋に無断で男が入ってくることはないはずなのに!
                            何者?
                            曲者?
                            泥棒?
                            かまえ!
                            がぼっ
                            「いってえ〜っ!」
                            一瞬のうちに、長身の男は吹き飛ばされるように殴られ、転んだ。
                            殴ったのはもちろん姫乃だ。
                            姫乃は幼いときから身体を丈夫に鍛えるためにと、武道をあれこれ習っていた。中でも得意なのは空手て、【邪道会館流空手道】のブラックベルト、つまり黒带の有段者。
                            とから、その華奢な身体でももっと本気で殴ったら、きっと相手は気絶したまま意識は戻らなかったろう。とはいえ、手加減していても姫乃に殴られたらかなりのダメージだ。
                            「いってえなあ。いきなりごあいさつだよな」
                            男は立ち上がって、殴られた頰をさすった。
                            ふと、その声が、聞きなれた声のように、姫乃は感じた。
                            長い髪、澄んだ瞳。
                            落ち着いてよく見れば、それが誰だかすぐにわかった。
                            「あああ!あんた、引っ越し屋の颯」
                            「誰が引っ越し屋だって?」
                            「だって、さっき夢に出てきたんだもん」
                            引っ越し屋ではないにしても、この男には用はない。
                            なのに、乙女の部屋に厚かましく入って来て、平然とした顔をしている。
                            まさか、ストーカー!?変態!?痴漢!?
                            許せない!
                            かまえ!!
                            また攻撃のかまえをとる姫乃だった。
                            おい、仕事で来たんだからさ、邪魔しないでくれよな。
                            颯はぶっきらぼうに言った。
                            「あんたの仕事場は、お父さんのところでしょう?」
                            颯は淡雪家に住み込みで働いている。父親の薫が気に入って、自分の創作活動の助手に雇っているのだ。
                            「今日は別の仕事」
                            「別の仕事?」
                            「それよりさ、どーでもいいけど、その、格好、なんとかしろよ」
                            「?え!?」
                            そうだった。慌ててバスルームから出てきたから、生乾きのぬれ髪がおっ立ったままで、しかもバスローブをまとった姿の……
                            乙女が殿方の前に出るような姿ではない
                            「やだ、あたしったら」
                            今さら遅いと思いつつ、姫乃の顔はみるみる赤面した。
                            「リングに上がる前のボクサーみたいだぜ」
                            「ボクサーって……」
                            拳击手……
                            颯は、ソファーにかけてあったピンクのワンピースをつかんで、ぽいと姫乃に投げてよこした。
                            そして、姫乃から目をそらすように、バルコニーの方を見つめ、姫乃に背を向けた。
                            そして、背を向けたまま、ぶっきらぼうにこう言った。
                            「着替え、早くしてくれよな。こっちの作業の時間もあるし」
                            あ、ごめんなさい。今すぐ」 」。
                            と言いかけて、うん?と姫乃の頭に?????マークがたくさん散りばめられた。
                            「ちよっと、待ってよ。ここはあたしの部屋よ。プライバシーの領域なのよ。いったい、あんた、あたしの許可なく、ここで何をしようというのよ」
                            「見学ルートのセッティングに来たんだよ」
                            颯は振り返った。
                            「見学ルー卜って?」
                            「今日はこのお屋敷の一般公開日なんだろ?」
                            「そうだけど、あたしの部屋は見せないわよ。今日、建物の内部でお客様に見せるのはこの真上の繭根の部屋のはずだけど。あ、颯ったら、あたしの部屋と繭根の部屋を間違えたのね。はいはい、そうとわかったら、さっさと出ていく……
                            それが、急遽変更になったんだってさ」
                            え~」
                            そんなの閒いてないよお、と姫乃は叫びたかった。
                            ダイニングルームや居間の他に、今日の見学コースの目玉として、個人のプライベートレー厶では、ひときわゴージャスな繭根の部屋が特別な見学コースに組み込まれていた。
                            繭根の用屋は、内装から家具まで、細部にいたるまでとにかくお金がかかっている。
                            姫乃の部屋だって、充分すぎるくらいお金持ちのお嬢様の部屋だけど、繭根の部屋はまるて、ヨーロッバのロイヤルプリンセスのお部屋そのもの。
                            べッドには天井から天盖が吊られているし、家具もすべてアンティークの輪入家具。
                            それも、わざわざ繭根のために母親の夏江がオークションで競り落とした骨董品ばかりて、テレビのお宝鑑定番組に出たら、いったいどんな高値がつくんだろうかというものばかり。
                            さらに、極めつけはバスルーム。
                            まず、浴室に入る前にいわゆる洗面室があるのだけど、そこだけでも、ワンルームマンションの一室がすっぽり収まってしまいそうなゆとりの広さ。
                            首先,在进入浴室之前就是所谓的洗手间,光是那里,就有一间公寓的房间一般大小的宽敞舒适。
                            というか、この広さも庶民ならお友逹を呼んでパーティーが開けてしまいそうだ。なにせ洗面室なのに、ソファーが二つも置いてある。その一つはレカミエ調といって、脚を伸ぱして横たわれるタイプのものだ。
                            繭根は、湯上がりにパックや全身マッサージをこのレカミエ・ソファーで受けながら、うとうとと昼寝をしたりするのが趣味なのだという。
                            そして、浴室は総大理石造りで、金ピカの鏡張り。
                            大理石も金ピカのシャワー水栓もすべてヨーロッパの一流ホテルの内装を手がけている業者から取り寄せたものだが、髙級ホテルのスイ—トルームの浴室でも、これほどリッチな造りはないと言われている。
                            (もちろん、夏江夫婦のプライベートルームの方が、格段と豪勢なのだげど、なにせ新婚ほやほやだし、淡雪コンツェルンのトップのプライバシーはそう簡単には披露しないという方针もあった。
                            繭根は、ったくぅ
                            姫乃には、 おおよその想像がついた。
                            昨日までは、ご自慢の自分の部屋を見せるんだと、めちゃくちゃ張り切っていた繭根だったが、気まぐれな繭根のことだ、今朝になってころっと気が変わったんだろう。
                            それとも、最初っからドタキャンして、あたしに押しつけようって魂胆の計画的犯行だったのかな
                            「じゃあ、始めさせてもらうからな」
                            「あ,ちよっと待って。今着替えるから」
                            いいよ、もう、この目が慣れちまったよ。それに、姫乃は全然色気ないからさ」
                            そう言いながら、颯は、姫乃の部屋の中に支柱を等間隔に立ててロ—ブを張る作業を始め出した。
                            だが、ぱらりと、垂れた黒髪の間から覗いた颯の耳が赤くなっていた。
                            (なんだ、照れてる。颯ったら)
                            憎まれ口をたたいていても、やはり女の子の部屋に入って来たというのは、颯にとっても気恥ずかしいことなのだろうか?
                            「何するの?」
                            「見ねばわかるだろ、見学コースの顺路を作ってる」
                            颯は、実に手際よくコープを張って支柱につなげていった
                            美術錧とか博物錧とかでよくみかける見学通路に使われるやつだ。
                            ロープに沿って步き、ロープを越えてはいけないという暗黙のル—ルがある。
                            けれども、それが自分あ部屋に設值されるというのはなんとも、奇妙な思いがする。
                            (だいたい何の断わりもなくなせ?あたしの意向ないて無視して、勝手に決められたわけ)
                            そう思うと、急に腹立たしくなってきた。
                            『ちょっとちよっと,そっちバスルー厶なんだけど」
                            「こっちもコースを作れって言われたんだけど」
                            やめてよね!だいたいあたし、この部屋を見せてもいいなんて許可してないんだから。悪いけど、この目障りなロープ片付けてとっとと出ていってもらえないかな
                            「…わかった……」
                            颯は作業の手を止めた。
                            「こめん……」
                            「え?」
                            あたってごめん。颯、あなたは言われたまま仕事してただけだものね、あなたに文句言うのはおかと違いだった。いいよ、続けて。ロープの設置続けてよ
                            「いいのか」
                            えん、だって、見られて恥すかしいものないし、この部屋いつもメイドさんがきれいに掃除してくれてるし、きっと後で、午後の一般公開が始まるまでに、また最終チェックのお掃除するんじゃないかな。バスルームだって、使ったあと、いつの間にかきれいに掃除ができてるの。まるでホテルみたいでしょ。なんだか、分不相応なんだけど、すごい家に引っ越して来たものだなって……」
                            姫乃がしゃべっているのを聞いているのかどうなのか、颯はまたロープ設置の作業を再開した。
                            「颯って、いろんな仕事頼まれるんだ。お父さんの助手だけじゃなくて、今日はこーゆーロープ設置の仕事とか」
                            「まあね」
                            颯の受け答えは相変わらずそっけない。
                            「面门い?」
                            「つまらんことはやらないさ」
                            「そうだね」
                            どうも、会話が続かない。


                            IP属地:广东14楼2019-08-16 12:41
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                              あんまし、女の子と話すのは好きじゃないのかも、と姫乃は思い、それ以上あれこれ聞くのはやめにした。
                              だまってると、ハンサムで女の子にもてそうで、やさしそうなんだけど、口を開くとそうでもないし、うざったそうだ。
                              こういうタイプは、必要最低限の会話しか成り立たない。
                              『あの……」
                              「何か?」
                              「せっかくだったら、バルコニーの方、よく見えるようにコース作ってもらえないかな?」
                              默々と作業している颯を見て、最初、言うのをためらった姫乃だったが、だが、これだけは言わずにいられなかった。
                              そう、どうせ、他人様に見学してもらうなら、一生懸命育てている花を見てもらいたいと姫乃は思ったのだ。
                              「引っ越しのときに運んだ植木か」
                              バルコニーに目をやった颯が、ふと言葉を漏らすように言った。
                              「偉いな、ちゃんと育ててるんだ」
                              ずっとぶっきらぼうだった颯の表情が、そのときちょっとやさしくなったように、思えた。
                              以前の姫乃が父親の薫と暮らしていたアパートには、家具らしい家具などほとんど無かった。
                              もし、あったとしても、このお屋敷のインテリアにはおよそ不釣り合いだったろう。
                              今、姫乃の部屋にある家具はみな、義母の夏江が用意してくれたものだ。
                              ただ、唯一、前のアパートから運んできたもの、それが、バルコニーを埋めつくし、そして、出窓のさんにも置かれているプランターに植えられた植物たちだ。
                              それは、姫乃にとってとても大切な宝物だ
                              なぜなら幼い頃亡くなってしまった姫乃の母の思い出そのもだがら
                              やさしい母は植物を育てるのが上手だった。
                              姫乃は、そんな母の姿を見て育った。
                              母が命を吹き込んだ草花は、翌年もまた、季節になると芽を出し、花を咲かせる
                              それを、母亡き後も姫乃はずっと引き継いで来た。
                              だから、姫乃にとっては、母親の分身、命なんである。
                              「へええ、だてにチューリップ頭ってわけじゃないんだな」
                              プランターの草花を見ているうちに、ちよっとセンチメンタルな気持ちになりかけていた姫乃。
                              ところか颯のその一言は、そんな気分をぶち壊すものだった。
                              「チューリップ頭!?また言ったわね」
                              そうなのだ。花びらの先が外に向かって咲いたチューリップを逆さにしたような形、それが姫乃のヘアスタイルだった。
                              ただ、颯のようなちょいとデリカシーに欠ける男に、チューリップ頭なんぞと言われると、打たれ強い姫乃であっても、気に障る。
                              思い出すつもりはなかったが、引っ越しのときも……
                              「ちよっと、そこのチューリップ頭のお嬢さん、邪魔だよ、どいて」
                              「颯、あたしには姫乃って名前があるんだけど」
                              姫乃はムカっときたけど、それをそばで聞いていた父親の薰にはたいそう受けた。
                              薫がお腹を抱えて、よじれるほど笑ったので、そのときは文句をいうタイミングを逸してしまったのだ。
                              おまけに、よほど「チューリップ頭」のネーミングが気に入ったのか、それがきっかけで薫は颯を住み込みの専属助手に雇ってしまった。
                              でも、姫乃は内心、うれしいわけではなかった。むしろ腹立たしい。
                              だから、今度こそ文句の一言でも言いたかったのだ。
                              「鏡見たら
                              颯は突っぱねたように言った。
                              鏡!?
                              (やだ、あたし、髪の毛ドライヤーで乾かしてた途中だったんだ!)
                              慌ててバスルームに駆けこんだ姫乃は、洗面台の大きな鏡に飛び込んできたわが姿に、一瞬あっけにとられてしまった。
                              確かに、咲いて咲いて、満開を通り越したような、おもいっきりのチューリップ頭になっていたからだ。
                              やだ、あたしったら、……
                              それは、まるで闘いを終えたポクサーのようだった。
                              颯のたとえ方は実に的確だったのだ。
                              バスローブをまとった女の子というのは、ふつうもう少し色っぽいというか、しとけないものだが、なんというか色気というものがまったくない。
                              「ごめん、あたし、確かにチューリップ頭のボクサーだったわ……」
                              姫乃が、バスルームから出てくると、だが、そこにはもう、颯の姿はなかった。
                              そのかわり、ゴージャスに着飾った夏江と繭根の姿があった。
                              「あら、姫乃さん。まだ、お支度終わってないのね。もうすぐ昼食の時間ですわよ」
                              「あの、お義母様、あたし、この部屋を見学用に開放することは……」
                              「姫乃の部屋の方が、いいと思ったのよ。わたくしの部屋は、ダイヤモンドとかルビーとか、貴重品が多いからやっぱり心配なの。家具だって価値のあるアンティークで、万が一傷でもつくと困るから。その点、姫乃さんの部屋だったら、ごく平均的なお金持ちのお嬢様風の部屋で、一般の方々に反感を買うことも少ないと思うし」
                              姫乃の意向を無視して勝手に決めた繭根に文句を言おうと思ったら、その前に繭根に先手を打たれた。
                              姫乃さん、今日は淡雪家の大切な行事ですから、家のことを思って協力してほしいの
                              と、夏江が言った。
                              そうだよ、淡雪タウンの人が楽しみにしてるっていうんだ。街の人に喜んでもらえることが、また我々家族の喜びだからね。
                              そう言って、部屋に入って来たのは父親の薰だった。
                              ダークスーツにカラフルなネクタイをして、イタリアン・ジゴロのような洒落た服装。夏江の好みをそのまま着せられた人形のようだが、無精髭に銀縁の眼鏡をかけて細面の薫は、妙に似合っていた。
                              「まあ、薫さん、見違えましたわ。すてき!じゃあ、ダイニングの方に行きましょうか」
                              夏江は嬉しそうに微笑んで、薫の腕に手をまわした。
                              「姫乃さん、早くお支度なさってね」
                              「ねえ、お母様、やっぱりバルコニーの雑草、片付けさせた方がよくなくて?」
                              薫と部屋を出て行こうとしていた夏江を繭根は呼び止めた。
                              「ああ、そうだったわ。それも、薫さんの助手にやらせましょう」
                              そう言って、夏江は薫と階段を下りていった。
                              代わって、どたどたとまた、颯が階段を走って上がってきた。
                              「今度はバルコニーですか?」
                              「そう。バルコニーの雑草みんな片付けて」
                              「ちょっと待ってよ。それ雑草じゃないわ。あたしが大切に育てている植木よ」
                              と姫乃が繭根を遮った。
                              「これを、见学者にお見せするのは、我が家の恥よ。我が家には植物園並みの花畑もあるし、もっと高級なお花が似合うの。いくらなんでも、ここに生えてるのはみすぼらしすぎるわ。さあ、颯どこか目のつかないとこヘ隐しておいて。
                              「失礼ね、ここはあたしの部屋よ」
                              「あなたの部屋であっても意見は言うわ。わたくしはこの家の長女ですら」
                              「俺は、ちっともみすぼらしくないと思いますけど」
                              そこに口を挟んだのは颯だった。
                              「ちゃんと手入れされて、大切に育てられてる。見る人の心を和ませる花ですよ」
                              「颯……」
                              いつもぶっきらぼうの颯が、こんなふうに助け船を出してくれるとは、意外だった。
                              しかも、高びーな繭根に対して動じることもなく。
                              「何よ、あなた。助手の分際で生意気ね」
                              「助手の分際でも意見はあるし、生意気なのは生まれつきです。でもお嬢さんみたいに生き物に冷たくはないですよ。よく見てください。きれいじゃないですか?どこがみっともないんです?この花がきれいに見えないってことは、見る人の心がすさんでるんですよ」
                              「んまっ……」
                              繭根は珍しく、言葉を飲んだ。
                              ……とにかく、きれいに並べて、見栄えよくしておくように。姫乃さんはがさつだから、せっかくの花が、きれいに見えないのよ」
                              そう言って繭根は部屋を出ていった。
                              「ありがとう……」
                              バルコニーの鉢植えを並べ替えている颯に、姫乃は声をかけた。
                              だか、颯が返した言葉は相変わらずぶっきらぼうだった。
                              「おい、チューリップ頭。いつまで、その格好なんだよ。もうすぐ十二時半だろ」
                              「いっけない!」
                              姫乃は慌てて、またバスルームに飛び込んだ。


                              IP属地:广东15楼2019-08-16 12:42
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