「ひとつ、とても残念なことを言わないといけないわ」
翡翠はとても悲しそうに切り出した。
「どうしても、女同士で妊娠する手段を見つけられなかったの。私にペニスさえあれば、何の問題もなかったのに……」
いや、問題はあるんじゃないかな。
思わず心の中でツッコミを入れる。
そりゃ、男に抱かれるよりは抵抗は無いけれど。
「科学でも魔法でも無理だなんて、ほんと使えないわ」
「えっと……科学はわかるけど魔法って?」
「エイモックという男に聞いたわ」
「……っ! エイモックに会ったの!?」
「ええ。誰にも聞かれたくなかったから一人で……蒼汰の妹だと名乗ったら呆れてたわね」
「何をやってるの!?」
エイモックはこの前俺と蒼汰に煮え湯を飲まされたばかりだ。そんな相手に一人で会いに行くなんて……
「魂操作ソウル・マニピュレータで胎児に魂を移せるのか確かめる必要があったもの。何の根拠もなくこんな提案できる訳ないでしょ? まさか、アリシアに聞くわけにはいかないし」
「それにしても無謀すぎるよ! あの男がどれだけ危険なのかわかってるの!?」
「そんなの重々承知の上よ。でも、他に選択肢はなかったから仕方ないじゃない。それに、実際に会ってみたら話のできない相手じゃなかったわよ?」
「話ができるから危ないんだ! もし、話してる言葉に魔法を乗せられていたら、いつの間にか洗脳されていたかもしれないんだよ!?」
「でも、アリスも一人で会いに行ったのよね? それは、アリシアを助けるのに必要だと思ったからなんでしょ?」
「そ、それは……そうだけど」
「私も同じことをしただけよ。それなのに、あなたは私のことを責めるの?」
「だって、翡翠は女の子なんだし……危険すぎるよ」
「あなたもじゅうぶん女の子してると思うけどね……いずれにしろ無事だったんだしいいじゃない。それよりも話を進めましょ?」
いまさら言い争っても仕方のないことだろう。
俺は渋々了承した。
「妊娠して胎児に魂を移すことが可能かどうか聞いてみたら、その手があったかとエイモックは面白がっていたわ。理論的には可能だそうよ。過去に母親が胎児に魂を移した例もあるみたい」
「……なんであいつは、それを私に教えてくれなかったんだ」
「結果は失敗だったみたいだから思いつかなかったそうよ。その人の場合、魂の転移は成功したけど、魂が失われた母胎が死亡してしまって、そのまま胎児も亡くなってしまったらしいから」
「なるほど……」
魂が2つあるというイレギュラーな状況だからこそ使える手段というわけか。
「その後、魔法でペニスを作れないか聞いたら、エイモックは急に頭を抱えてしまったけど……こっちは真剣に聞いてるのに、失礼しちゃうわ」
……エイモック。
「まぁ、それはいいわ……それで、アリスはどうするつもり?」
「決まってる。私はアリシアを助けるよ」
俺は翡翠に宣言する。
「妊娠出産は命懸けよ? 特に小柄なあなただと出産のリスクは通常よりも高いものになると思うわ」
「うん」
俺は下腹部に手を当てる。
子供はお腹の中にできて、それから、その……あそこを通って出てくるんだよな。
全く想像もつかない。
指ですら怖くて自分では入れたことがないのに。
だけど、ためらう理由にはならない。
「それに、魂の転移に成功したとしても、記憶や性格が受け継がれるかどうかまではわからないの。だから、産まれてくる子供はあなたの知るアリシアと全く異なる人物になるかもしれない。胎児の性別は選べないから、男になる可能性だってあるの」
それでもなお、アリシアを産んで育てるのかと翡翠は問う。
「答えは変わらないよ。私はアリシアと一緒に生きたいんだ。そのために取れる手段があるのなら、決して諦めない」
今の俺が生きているのは、アリシアが全てを差し出してくれた結果だから。
「……それが、本来産まれてくるはずの魂から器を奪うことになるとしても?」
これは生命の理から外れた外法の類になるだろう。
本来産まれてくるはずの自分の子供から体を奪う。
これは、法で裁かれることはなくても、親として人の道を外れた罪深い行為であることは間違いない。
「それでも、俺は……」
諦めきれない。
翡翠はとても悲しそうに切り出した。
「どうしても、女同士で妊娠する手段を見つけられなかったの。私にペニスさえあれば、何の問題もなかったのに……」
いや、問題はあるんじゃないかな。
思わず心の中でツッコミを入れる。
そりゃ、男に抱かれるよりは抵抗は無いけれど。
「科学でも魔法でも無理だなんて、ほんと使えないわ」
「えっと……科学はわかるけど魔法って?」
「エイモックという男に聞いたわ」
「……っ! エイモックに会ったの!?」
「ええ。誰にも聞かれたくなかったから一人で……蒼汰の妹だと名乗ったら呆れてたわね」
「何をやってるの!?」
エイモックはこの前俺と蒼汰に煮え湯を飲まされたばかりだ。そんな相手に一人で会いに行くなんて……
「魂操作ソウル・マニピュレータで胎児に魂を移せるのか確かめる必要があったもの。何の根拠もなくこんな提案できる訳ないでしょ? まさか、アリシアに聞くわけにはいかないし」
「それにしても無謀すぎるよ! あの男がどれだけ危険なのかわかってるの!?」
「そんなの重々承知の上よ。でも、他に選択肢はなかったから仕方ないじゃない。それに、実際に会ってみたら話のできない相手じゃなかったわよ?」
「話ができるから危ないんだ! もし、話してる言葉に魔法を乗せられていたら、いつの間にか洗脳されていたかもしれないんだよ!?」
「でも、アリスも一人で会いに行ったのよね? それは、アリシアを助けるのに必要だと思ったからなんでしょ?」
「そ、それは……そうだけど」
「私も同じことをしただけよ。それなのに、あなたは私のことを責めるの?」
「だって、翡翠は女の子なんだし……危険すぎるよ」
「あなたもじゅうぶん女の子してると思うけどね……いずれにしろ無事だったんだしいいじゃない。それよりも話を進めましょ?」
いまさら言い争っても仕方のないことだろう。
俺は渋々了承した。
「妊娠して胎児に魂を移すことが可能かどうか聞いてみたら、その手があったかとエイモックは面白がっていたわ。理論的には可能だそうよ。過去に母親が胎児に魂を移した例もあるみたい」
「……なんであいつは、それを私に教えてくれなかったんだ」
「結果は失敗だったみたいだから思いつかなかったそうよ。その人の場合、魂の転移は成功したけど、魂が失われた母胎が死亡してしまって、そのまま胎児も亡くなってしまったらしいから」
「なるほど……」
魂が2つあるというイレギュラーな状況だからこそ使える手段というわけか。
「その後、魔法でペニスを作れないか聞いたら、エイモックは急に頭を抱えてしまったけど……こっちは真剣に聞いてるのに、失礼しちゃうわ」
……エイモック。
「まぁ、それはいいわ……それで、アリスはどうするつもり?」
「決まってる。私はアリシアを助けるよ」
俺は翡翠に宣言する。
「妊娠出産は命懸けよ? 特に小柄なあなただと出産のリスクは通常よりも高いものになると思うわ」
「うん」
俺は下腹部に手を当てる。
子供はお腹の中にできて、それから、その……あそこを通って出てくるんだよな。
全く想像もつかない。
指ですら怖くて自分では入れたことがないのに。
だけど、ためらう理由にはならない。
「それに、魂の転移に成功したとしても、記憶や性格が受け継がれるかどうかまではわからないの。だから、産まれてくる子供はあなたの知るアリシアと全く異なる人物になるかもしれない。胎児の性別は選べないから、男になる可能性だってあるの」
それでもなお、アリシアを産んで育てるのかと翡翠は問う。
「答えは変わらないよ。私はアリシアと一緒に生きたいんだ。そのために取れる手段があるのなら、決して諦めない」
今の俺が生きているのは、アリシアが全てを差し出してくれた結果だから。
「……それが、本来産まれてくるはずの魂から器を奪うことになるとしても?」
これは生命の理から外れた外法の類になるだろう。
本来産まれてくるはずの自分の子供から体を奪う。
これは、法で裁かれることはなくても、親として人の道を外れた罪深い行為であることは間違いない。
「それでも、俺は……」
諦めきれない。