今年もあと20日ほど。ふだんなら帰省を準備する時期だが、様相がまるで違う。お盆に続いて、年末年始も、地方に住む高齢のわが親を訪ねるかどうかギリギリまで悩んだ▼介護の現場では今年、「2週間ルール」が問題となった。聞き慣れない言葉だが、感染拡大地域から親族が帰省した場合、以後2週間は訪問介護や施設利用を停止するという内々の申し合わせだ。遠距離介護を支えるNPO「パオッコ」理事長の太田差恵子さんによると、こうした措置が一時期、多くの施設で導入されたという▼パオッコに寄せられた相談内容を聞くと身につまされる。たとえば「首都圏の方は入館お断り」という施設の貼り紙。あるいは機器が苦手でオンライン対話をいやがる親。半年あまり帰省を控えた間に認知症が進み、昼夜かまわず電話をかけるようになった高齢者もいるそうだ▼施設の側も悩み続けた1年だった。検温や消毒に努めても万全との保証はない。集団感染の不安と常に背中合わせの日々。重症化リスクの高いお年寄りたちを守るための奮闘が続く▼介護の現場に限らず、各地で医療がまさに逼迫(ひっぱく)している。政府の感染症対策分科会はきのう、「帰省は慎重に」「年末年始は静かに過ごして」と呼びかけた。高齢者のがんばりに若い世代の思いやりを重ねなければ乗り切れぬ年の瀬である▼医療や介護の最前線に立つ人々の熱意と踏ん張りには改めて頭が下がる。今冬はやはり帰省を見送り、電話と手紙の機会を増やそうか。