キリンが水を飲んだあと、急に頭を上げ、沈思黙考する姿を動物園で見ることがある。きっと何か哲学者めいた思索にふけっているにちがいない。長年そう思いこんでいたが、私の買いかぶりすぎだった▼
「あれは貧血を起こしてボーッとしているだけかも。頭の上げ下げで血圧が急変します」。意外な解説をしてくれたのは東洋大助教の郡司芽久(めぐ)さん(32)。幼稚園に入る前から大のキリン好きで、動物園に行けばキリン舎に張り付いたという。東京大に入学してまもなく研究者を志す▼
初めて解剖を手伝ったのは19歳の冬。「この骨が柔らかな身のこなしを支えていたのか」。全身の仕組みを解き明かす作業に没頭した。これまでに解剖したのは38頭。世界屈指の多さだ。寝食を忘れる日々を描いた『キリン解剖記』は、広く読者を得た▼
〈夏至の日はしづかにキリンを思ふべし絶滅に向かひ濡(ぬ)れるまつげの〉臼井均。昨年の夏、朝日歌壇に載った1首である。なぜ夏至の日にキリンなのか。調べてみると、一年で一番昼が長いことと、動物の中で首が一番長いことにちなみ、「世界キリンの日」が制定されていた▼
きょうがその日である。アフリカの野生キリンはこの30年間で、4割も減った。内乱や密猟が主因で、保護活動が続けられている▼
郡司さんから「圧倒的美人」と太鼓判を押されたのが、東京・多摩動物公園のアオイ。だが十数頭もいて、誰が誰やら見分けられない。わがキリン愛の乏しさを自覚しつつ、園を後にした。
「あれは貧血を起こしてボーッとしているだけかも。頭の上げ下げで血圧が急変します」。意外な解説をしてくれたのは東洋大助教の郡司芽久(めぐ)さん(32)。幼稚園に入る前から大のキリン好きで、動物園に行けばキリン舎に張り付いたという。東京大に入学してまもなく研究者を志す▼
初めて解剖を手伝ったのは19歳の冬。「この骨が柔らかな身のこなしを支えていたのか」。全身の仕組みを解き明かす作業に没頭した。これまでに解剖したのは38頭。世界屈指の多さだ。寝食を忘れる日々を描いた『キリン解剖記』は、広く読者を得た▼
〈夏至の日はしづかにキリンを思ふべし絶滅に向かひ濡(ぬ)れるまつげの〉臼井均。昨年の夏、朝日歌壇に載った1首である。なぜ夏至の日にキリンなのか。調べてみると、一年で一番昼が長いことと、動物の中で首が一番長いことにちなみ、「世界キリンの日」が制定されていた▼
きょうがその日である。アフリカの野生キリンはこの30年間で、4割も減った。内乱や密猟が主因で、保護活動が続けられている▼
郡司さんから「圧倒的美人」と太鼓判を押されたのが、東京・多摩動物公園のアオイ。だが十数頭もいて、誰が誰やら見分けられない。わがキリン愛の乏しさを自覚しつつ、園を後にした。