伊豆半島を流れる狩野川(かのがわ)は1958年の台風で決壊し、鉄砲水や土石流が多くの住民の命を奪った、上流の月ケ瀬地区にあった医療施設には気象に詳しい博士がいた。早めに患者ら30人を率いて避難し、難を逃れた▼
「月ケ瀬の教訓」としていまに語り継がれる。博士の迅速な決断に敬意を覚えるが、わが胸に手を当てれば、迷わず避難できるかまるで自信がない。この5月に導入された新しい避難情報も、のみ込めていなかった▼
旧制度のもと頻繁に耳にしてきた避難勧告という言葉が消えた。警戒レベル5段階の呼称も見直された。①早期注意情報②大雨・洪水・高潮注意報③高齢者等避難④避難指示⑤緊急安全確保。レベル5はもはや安全な避難ができない段階だという▼
そして迎えた7月の水害多発期。東海や関東が豪雨に見舞われ、そのレベル5が初めて発令された。土石流が起きた静岡・熱海で取材中の同僚によれば、破壊の跡はすさまじい。布団や自動販売機が路上で泥にまみれ、消防車両が行き交う。空は厚い雲に覆われ、被害の全容はなお見通せない▼
さかのぼれば、避難勧告という語が新法に明記されたのは1961年。狩野川台風に続き、大勢の住民が逃げ遅れた伊勢湾台風がきっかけとなった。その後も豪雨が被害を及ぼすたび、避難情報の見直しが重ねられてきた▼
新制度はどこまで住民に浸透していたか。自治体による警告の発し方は適切だったか。痛ましい被害を繰り返さぬためにも検証は欠かせまい。
「月ケ瀬の教訓」としていまに語り継がれる。博士の迅速な決断に敬意を覚えるが、わが胸に手を当てれば、迷わず避難できるかまるで自信がない。この5月に導入された新しい避難情報も、のみ込めていなかった▼
旧制度のもと頻繁に耳にしてきた避難勧告という言葉が消えた。警戒レベル5段階の呼称も見直された。①早期注意情報②大雨・洪水・高潮注意報③高齢者等避難④避難指示⑤緊急安全確保。レベル5はもはや安全な避難ができない段階だという▼
そして迎えた7月の水害多発期。東海や関東が豪雨に見舞われ、そのレベル5が初めて発令された。土石流が起きた静岡・熱海で取材中の同僚によれば、破壊の跡はすさまじい。布団や自動販売機が路上で泥にまみれ、消防車両が行き交う。空は厚い雲に覆われ、被害の全容はなお見通せない▼
さかのぼれば、避難勧告という語が新法に明記されたのは1961年。狩野川台風に続き、大勢の住民が逃げ遅れた伊勢湾台風がきっかけとなった。その後も豪雨が被害を及ぼすたび、避難情報の見直しが重ねられてきた▼
新制度はどこまで住民に浸透していたか。自治体による警告の発し方は適切だったか。痛ましい被害を繰り返さぬためにも検証は欠かせまい。