ビールのグラスを傾け「おいしい」と言うだけのCMは究極のワンパターンながら、やっぱり喉(のど)が鳴る。しかしこれまで見た映像で一番うまそうなビールは、黒澤明監督「野良犬」の一場面にあったように思う▼
「配給のビールがあるのを思い出してね」。ベテラン刑事が若い刑事を家に連れてきて、一緒に飲む。終戦直後の夏の日、汗みどろになって聞き込みをした刑事たちの喉の渇きを思う。配給という言葉の響きとともに▼
暑いさなかの得がたい冷たさ。そんな飲み物、食べ物は長く記憶に残る。汗びっしょりになって遊んだ後、友だちの家で飲んだ麦茶。夏のラジオ体操で配られた色鮮やかなアイスキャンディー▼
富安風生の句に〈一生の楽しきころのソーダ水〉がある。その光景は喫茶店でおしゃべりをする若者たちか。あるいは駄菓子屋でラッパ飲みをする子どもか。「冷やしラムネ」「夏氷」など文字にするだけで涼やかな気分になるものが、この国にはある▼
総務省の家計調査で昨年のアイスの年間支出額が過去最高だったという。2人以上の世帯で年間1万円を初めて超えた。冷房のきいた職場と違い、巣ごもり生活でつい手を伸ばしてしまう人が増えたのか。もちろん昨年の夏もかなりの暑さだった▼
きのうの四国を最後に全国すべての地域で梅雨明けとなった。〈それぞれに何かを終へし麦酒かな〉古川朋子。ビールでも氷菓子でも、暑さのなかでがんばる自分へのご褒美がいる。そんな季節がまためぐってきた。
「配給のビールがあるのを思い出してね」。ベテラン刑事が若い刑事を家に連れてきて、一緒に飲む。終戦直後の夏の日、汗みどろになって聞き込みをした刑事たちの喉の渇きを思う。配給という言葉の響きとともに▼
暑いさなかの得がたい冷たさ。そんな飲み物、食べ物は長く記憶に残る。汗びっしょりになって遊んだ後、友だちの家で飲んだ麦茶。夏のラジオ体操で配られた色鮮やかなアイスキャンディー▼
富安風生の句に〈一生の楽しきころのソーダ水〉がある。その光景は喫茶店でおしゃべりをする若者たちか。あるいは駄菓子屋でラッパ飲みをする子どもか。「冷やしラムネ」「夏氷」など文字にするだけで涼やかな気分になるものが、この国にはある▼
総務省の家計調査で昨年のアイスの年間支出額が過去最高だったという。2人以上の世帯で年間1万円を初めて超えた。冷房のきいた職場と違い、巣ごもり生活でつい手を伸ばしてしまう人が増えたのか。もちろん昨年の夏もかなりの暑さだった▼
きのうの四国を最後に全国すべての地域で梅雨明けとなった。〈それぞれに何かを終へし麦酒かな〉古川朋子。ビールでも氷菓子でも、暑さのなかでがんばる自分へのご褒美がいる。そんな季節がまためぐってきた。