ベートーベンの「田園」を指揮することになっていた指揮者がいた。舞台の袖からものすごい顔をして出てきて、こわい表情のままタクトを振り上げた。その瞬間、演奏者の一人が声を上げた。「マエストロ、違います」▼
指揮者は間違ってベートーベンの「運命」をやろうとしていたらしい。池辺晋一郎著『音楽ってなんだろう?』にある逸話である。はたから見て分かるほど、その立ち居振る舞いに違和感があったのだろう▼
話は変わって五輪開会式の作曲担当である。「違います。あなたではない」と言われたのがミュージシャンの小山田圭吾氏(52)だった。小中学校の頃、同級生や障害者にひどいいじめをしていた。20代半ばになって、それを雑誌で得意げに語っていたことが問題となった▼
我が身を省みずに五輪そしてパラリンピックの仕事を引き受けたことにあきれるが、組織委員会もろくに調べず起用したのだろう。深刻なのは、外部から指摘された後も続投させようとしたことだ。それが一転、小山田氏の辞任、楽曲の一部削除となった▼
開会式直前ゆえ、続投も「許されるかなと考えた。だが、判断が甘かった」と組織委は説明する。世間を甘く見たと内心思っているかもしれないが、彼らが甘く見たのはオリパラの理念そのものである。森喜朗氏の問題から何も学んでいない▼
小山田氏が担当したのは式の冒頭の4分間だという。別の曲に差し替えるのではなく、いっそ無音にして反省と謝罪の意を表してはどうか。
指揮者は間違ってベートーベンの「運命」をやろうとしていたらしい。池辺晋一郎著『音楽ってなんだろう?』にある逸話である。はたから見て分かるほど、その立ち居振る舞いに違和感があったのだろう▼
話は変わって五輪開会式の作曲担当である。「違います。あなたではない」と言われたのがミュージシャンの小山田圭吾氏(52)だった。小中学校の頃、同級生や障害者にひどいいじめをしていた。20代半ばになって、それを雑誌で得意げに語っていたことが問題となった▼
我が身を省みずに五輪そしてパラリンピックの仕事を引き受けたことにあきれるが、組織委員会もろくに調べず起用したのだろう。深刻なのは、外部から指摘された後も続投させようとしたことだ。それが一転、小山田氏の辞任、楽曲の一部削除となった▼
開会式直前ゆえ、続投も「許されるかなと考えた。だが、判断が甘かった」と組織委は説明する。世間を甘く見たと内心思っているかもしれないが、彼らが甘く見たのはオリパラの理念そのものである。森喜朗氏の問題から何も学んでいない▼
小山田氏が担当したのは式の冒頭の4分間だという。別の曲に差し替えるのではなく、いっそ無音にして反省と謝罪の意を表してはどうか。