黒うさP:コードのことで言えば、「千本桜」はいわゆる小室進行って言われるもので、やっぱり分かり易いのかなと思います。「ACUTE」もそうですね。でも、逆にR&B進行的な「リスキーゲーム」とかもミリオン(再生)に行ってますから。「リスキーゲーム」は少し分かりにくいので、本当はそんなに受けないだろうって思ってたんです。でも、実際には色んな人がカバーしてくれてるし。だからコード進行はあんまり関係ないのかも知れない。だとすると、世界観が大きいのかな? 「千本桜」も投稿した2日後くらいには「歌ってみた」の動画がすごい数出ていて。歌い手さんは初聴の時点で「歌いたい!」って思うんですかね? 僕は作り手なので、歌い手さんの気持ちは分からないですけど……。その後、いろんな派生が出て、和楽器バンドさんとか小林幸子さんとかが歌ってくれて、より創作の輪が広がった感じです。
――曲中にはドラマチックなピアノ・ソロもありますが、全てご自分で演奏されているのでしょうか?
黒うさP:弾いてますよ。ピアノだけは長いことやっていて、生ではキツいけど、自分で弾いて、録音して、いじってという感じで。あれぐらいであれば弾けます。
――あのパートも「ピアノのリサイタルで発表したい!」って思わせる部分かも知れません。
黒うさP:動画で中学生が弾いているのを見て、「僕より上手いわ~」って思います(笑)。エレクトーンの教本にも載ってるし、楽譜のダウンロードチャートにも上位ランクインしていて。そういうのを見ると、本当に弾いてくれてるんだなって思いました。カバーしてくれたり、演奏してくれたりというのは、作曲家にとっては一番ありがたいことですよね。
――カラオケでもかなり歌われているようです。
黒うさP:そうですね。自分の曲が歌われることも、作曲家として一番うれしい反応の一つだと思います。だって5年も前に発表した曲じゃないですか? でも今になって、和楽器バンドさんや小林さんがリリースしてくれて、また知らない方たちの耳に届く。昔の本とかと一緒ですよね。誰かが翻訳したりマンガにしたりして、新しい人たちに原作が知られていく、こういう連鎖はネットだとものすごく速い。例えば昔の洋楽がドラマで使われたりするじゃないですか?
――エルトン・ジョンとか。黒うさP:そうですそうです。そういう意味で、「千本桜」は少し洋楽みたいなヒットの仕方だと思います。
――少しスパンが空いて、またいろんなところに派生していく感じというか。
黒うさP:それがマンガだったり、小説だったりするんでしょうけど。そこは(角川に)おまかせしています。角川担当者:どんどんやらせて頂いています! 楽曲の人気もあって、小説も小中学校の図書館に置かれていて。カラオケの方も補足させて頂くと、この前も4年目の「千本桜」がボーカル部門で当たり前のように1位と発表されていて、あまりにも当たり前すぎて、皆さん反応が薄かったくらいです(笑)。黒うさP:逆に言うと、新陳代謝がないってことですよね。今後、ボカロ音楽がもっともっと盛り上がるために、新しい人が出てきて欲しいっていう期待はありますね。今まで発表する場のなかったアーティストが、ボカロ・シーンから出てきて、今でも作曲家として活動している人もいる。そういう一つの革命的なことを僕たちはやったんじゃないかなと思います。だから、このまま文化として定着してくれれば良いですね。僕自身、ryoさんとか先人が居て盛り上がっていたところに乗っかった部分もあったので、また次の世代に引き継いで欲しいなと思います。
↓和楽器バンド「千本桜」