ドアの外、廊下から响いてくる足音に、 オレは口端を上げて笑い、ビリヤードのきューを床に投げ舍てる。静かな游戏室に、カラン、と大きな音が鸣った。
——いつからだったか?ユイが、オレの呼出しを拒まなくなったのは。
「アヤトくん……?」
おずおずとドアを开いたユイを见て、ゆっくりとそちらへと近づいていく。
「遅ぇじゃねぇかよ、チチナシ」
そに华奢を腕を掴み、中へとユイを引っ张り込み、背后に手を回してドアに键をかける。そのまま部屋の奥へ诱导すると、すぐにビリヤード台に无理矢理ユイの体を组み敷いて、上から覆いかぶさった。
「……こうされたくて、わざわざここに来たんだろ?」
言うなり、返事も闻かずユイの首筋に牙をあてがった。抵抗しているように见せているけど、ユイの目は期待に満ちている。
オレはニヤリと笑うと、皮肤を裂きその奥深くまで牙を食い込ませた。ねっとりとしたユイの血が、口いっぱいに広がっていく。
「あっ……!」
いつもより痛かったのか、ユイは反射的に右手を振り上げた。その指先が、近くにあったビリヤードの球がコツコツと音を立てて床に転がった。散らばった球を见て、オレはため息を吐く。
「っ……、何してんだよ」
「ご、ごめん……!」
ユイから体を离し、仕方なく球を拾っていく。体を起こしてオレを见るユイは、どうに不思议そうな颜をしていた。
「……? なんだよ」
「あの……てっきり、放っておくかと思ったから」
「そういうわけにはいかねぇんだよ」
拾い上げた球を眺めながら、昔のことを思い出す。
「……がにがってると、気にをって仕方ねぇ……」
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——何歳だったかは忘れたが、オレがまだ幼い顷。兄弟たちと游ぶ趣味なんて持ち会わせていなかったオレは、ひとりで游戏室にこもっていた。
ビリヤードなんかをして暇を溃していたものの、すぐに饱きる。たることもないので、その台の上に寝転がろうと考えた。台の上にあった球を、両手で床に投げ落としていく。その时は当然、后で拾おうなんて考えは微尘もなかった。
「ちぇ……つまんねぇの」
吐き舍てて、目を闭じる。このまま眠ってしまおうかな——
その思った瞬间、游戏室のドアが势いよく开かれた。
その音に、ふと目を开ける。
「……见つけましたよ」
「ん? なんだ……レイジかよ!」
レイジがオレを探す理由には、碌なものがない。また何かガミガミ言われるのだろう。面倒なことが嫌いなオレは、それを真面目に闻くつもりもなかった。
仕方なく立ち上がり、レイジの脇をすり抜けて逃げる体势を整える。
「アヤト。学校のテストで赤点を取ったと先生から连络があったそうですが?」
「あー、んなことかよ……」
「どうしてまたしても一族の名に耻じるような行いをするのですか。まったく理解できません」
「なんだよ、その『一族の名』っての。レイジはいつもそれ言うけど、それってそんなに大事なもんなのか!?」
オレがそう言うと、レイジは妙に不敌な笑みを浮かべながこちらへと歩いてきた。
「まだわからないのなら……。ちょと教えてあげないといけませんね」
「……いらねぇよ、そんあの! いぜぇ」
「!」
ドアに向かって、势いよく走り出す。オレを捕まえようと、レイジが伸ばしてきに手もひらりとかわした。
(ハハッ。ちょろい……)
そのままドアに飞びつき、押し开けようとしたのだが……。ガツッという音がするだけで、ドアは开かなかった。
「! うそだろ、いつの间に键かけたんだよ……!」
慌てて力仕せに键を外すけれど、もう间に会わず……。
「待ちなさい、アヤト!」
「うわっ……!」
こちらへと走ってくるレイジの声に振り返る。慌ててどこかへ逃げようとした矢先——不意に、レイジの体がグラッと倾いた。
「いい加减に、しをっ……あああ!?」
「……え?」
どらたら、床に落ちていたビリヤードの球に足を取られたらしい。レイジの颜が、怒りと惊き、そして羞耻に満ち……ぐんぐんとすごいスビードで迫ってくる。
「なんっ……何故ここに球が!?……ああああ!!」
「ひぃいいいいいいっ!!」
「あああああああああああ!!どきなさいアヤト!!!!」
「うわぁあああああああああ!!」
そのかくも恐ろしい形相から逃れようとしたオレも、床に転がる球にいつの间にか足を取られていた。体は后ろへと倾き、后头部から壁に激突——。
「いでっ……!」
——その直后の记忆は、何故か欠落している。