翌日、熱は下がった。
そして、失っていた俺の理性も戻った。
理性が戻ると同時に、俺は心の中にATフィー●ドを張った。三重くらいの。
布団を被り、他人との接触を一切拒否したまま、部屋にこもった。
そこまで衝撃だったのか、だと?
そこまで怒っていたのか、だと?
違う。そうではない……。
涙が出る程に恥ずかしくて、部屋から一歩も出れなかったのだ。
一体なぜ、自分がジークにあんな行動と発言をしたのか、自分でも到底理解できない。
俺はベッドの上で布団を深く被ったまま、ピクリとも動かなかった。そしてなるべく、ジークを避けた。
今の状態のままジークと顔を合わせてしまうと、奴を殺してしまいそうだ。
怒っているから?
いや、恥ずかしいからだ。
――一体どうして俺はジークに怒ったんだろう!? どう考えても、これはまるで……まるで……!
これ以上は考えたくない!
昨夜の、嵐のように吹き荒れた感情と、自分の行動に名前をつけるのが怖い!
しかも昨夜、ジークが帰ってこなかった本当の理由を知ってからは、もう全てから逃げ出したいと思う程の羞恥心に駆られた。
現実は残酷だ!
昨夜の俺は、馬鹿な荒くれ者だったんだ!
状況はこうだった。
ジークが購買に到着した瞬間に、プリンが売り切れた。
あと三十分程で食料品の夜間配達が届くと言われて、ジークは少し待つことにしたようだ。その時に購買に来ていた三年女子の先輩たちが、ジークに興味を持ち、色々と話しかけたのだそうだ。
これが、昨夜の真相だ。
ジークは特に、彼女たちの誘惑に惑わされたわけでも、
チャラチャラした行動を取っていたわけでもなかった。
なのに俺は、昨夜の光景を目にした瞬間に理性を失い、事実を確かめることもなく怒り散らしたのだ。
一体どうして、あそこまで怒ってしまったのだろう。
ジークが俺を裏切ったわけでもないじゃないか。
いや、むしろ……奴が、俺以外の女性に恋愛的な興味を抱く方が、俺にはいい話じゃないのか? 俺に愛情を求める方が、深刻な問題だ!
この話はもういい。ともかく、昨夜涙を流す程に悲しかった自分の感情を思い出すと、背筋がゾワッとした。
まさか、俺が……ジークのせいで……あの……
嫉妬を……したわけでは、ないよな?
――絶対に違う……! 裏切られたからに過ぎない……!
いや、それって結局嫉妬じゃないか?
ジークが、俺以外の女と親しげに話していたから。
――俺のプリンのことをほったらかしにして、他の女と話していた姿が頭にきただけで……!
だから、それはつまり嫉妬なんじゃないか!?
俺を最優先にせず、他の女に愛想を振りまいたから……!?
いやいや、なぜ俺が嫉妬をするんだ?
男が、男のせいで嫉妬をするなんてあるのか? 実は男が好きだったのか!?
さっぱりわからない。全く。
この世は、わからないことだらけだ。
何はともあれ! 悪いのはジークだ!
俺をここまで悩ませる、あの量産型が問題なのだ! そうだ! あいつが悪い!
「パリル殿! 拙者の罪をお許しくだされ!」
奴はそう叫ぶと、ベッドの横で土下座をした。
おい、誤解するなよ?
お前ごときが女とつるんでいたくらいで、こ、この俺が……嫉妬なんて、するわけがないだろうが!?
俺様は、女なんぞ選び放題だった、最強の肉食男なのだ!
少し親切にしたからって、勘違いするなよ!
「テストを前に、パリル殿との訓練にだけ集中しても足りないところなのに、他の女性と会話してパリル殿の機嫌を損ねるなど……! 拙者は実に馬鹿な奴でござる! 一度だけ、一度だけお許しを……!」
なるほど……わかった。
それだ。「テスト」があったんだった。
これは、嫉妬なんかではない。
テストに全てを集中しても足りないこの時期に、俺の大事な道具であるジークが、パートナーである俺以外の人間に気を取られるなど。怒って当然の、ひどい行為だ!
やっとはっきりした。
だから怒りを覚えたんだな?
俺は勢いよく布団をめくり、中から堂々と顔を出した。
名分が出来た! よかった! ATフ●ールド、キャンセルだ!
「自分の愚かさが……わかったか?」
「わかったでござる! 殴っていいでござる! 踏んでもいいでござるよ! いや、思いっきり踏んでほしいでござる……! パリル殿の気が晴れるまで!」
「その必要はない、ザク……」
実際、誰かを殴るだけの気力もない。
俺は、跪いて必死に許しを請うザクを見下ろしながら、短くため息をついた。
要領が悪い。
そして、失っていた俺の理性も戻った。
理性が戻ると同時に、俺は心の中にATフィー●ドを張った。三重くらいの。
布団を被り、他人との接触を一切拒否したまま、部屋にこもった。
そこまで衝撃だったのか、だと?
そこまで怒っていたのか、だと?
違う。そうではない……。
涙が出る程に恥ずかしくて、部屋から一歩も出れなかったのだ。
一体なぜ、自分がジークにあんな行動と発言をしたのか、自分でも到底理解できない。
俺はベッドの上で布団を深く被ったまま、ピクリとも動かなかった。そしてなるべく、ジークを避けた。
今の状態のままジークと顔を合わせてしまうと、奴を殺してしまいそうだ。
怒っているから?
いや、恥ずかしいからだ。
――一体どうして俺はジークに怒ったんだろう!? どう考えても、これはまるで……まるで……!
これ以上は考えたくない!
昨夜の、嵐のように吹き荒れた感情と、自分の行動に名前をつけるのが怖い!
しかも昨夜、ジークが帰ってこなかった本当の理由を知ってからは、もう全てから逃げ出したいと思う程の羞恥心に駆られた。
現実は残酷だ!
昨夜の俺は、馬鹿な荒くれ者だったんだ!
状況はこうだった。
ジークが購買に到着した瞬間に、プリンが売り切れた。
あと三十分程で食料品の夜間配達が届くと言われて、ジークは少し待つことにしたようだ。その時に購買に来ていた三年女子の先輩たちが、ジークに興味を持ち、色々と話しかけたのだそうだ。
これが、昨夜の真相だ。
ジークは特に、彼女たちの誘惑に惑わされたわけでも、
チャラチャラした行動を取っていたわけでもなかった。
なのに俺は、昨夜の光景を目にした瞬間に理性を失い、事実を確かめることもなく怒り散らしたのだ。
一体どうして、あそこまで怒ってしまったのだろう。
ジークが俺を裏切ったわけでもないじゃないか。
いや、むしろ……奴が、俺以外の女性に恋愛的な興味を抱く方が、俺にはいい話じゃないのか? 俺に愛情を求める方が、深刻な問題だ!
この話はもういい。ともかく、昨夜涙を流す程に悲しかった自分の感情を思い出すと、背筋がゾワッとした。
まさか、俺が……ジークのせいで……あの……
嫉妬を……したわけでは、ないよな?
――絶対に違う……! 裏切られたからに過ぎない……!
いや、それって結局嫉妬じゃないか?
ジークが、俺以外の女と親しげに話していたから。
――俺のプリンのことをほったらかしにして、他の女と話していた姿が頭にきただけで……!
だから、それはつまり嫉妬なんじゃないか!?
俺を最優先にせず、他の女に愛想を振りまいたから……!?
いやいや、なぜ俺が嫉妬をするんだ?
男が、男のせいで嫉妬をするなんてあるのか? 実は男が好きだったのか!?
さっぱりわからない。全く。
この世は、わからないことだらけだ。
何はともあれ! 悪いのはジークだ!
俺をここまで悩ませる、あの量産型が問題なのだ! そうだ! あいつが悪い!
「パリル殿! 拙者の罪をお許しくだされ!」
奴はそう叫ぶと、ベッドの横で土下座をした。
おい、誤解するなよ?
お前ごときが女とつるんでいたくらいで、こ、この俺が……嫉妬なんて、するわけがないだろうが!?
俺様は、女なんぞ選び放題だった、最強の肉食男なのだ!
少し親切にしたからって、勘違いするなよ!
「テストを前に、パリル殿との訓練にだけ集中しても足りないところなのに、他の女性と会話してパリル殿の機嫌を損ねるなど……! 拙者は実に馬鹿な奴でござる! 一度だけ、一度だけお許しを……!」
なるほど……わかった。
それだ。「テスト」があったんだった。
これは、嫉妬なんかではない。
テストに全てを集中しても足りないこの時期に、俺の大事な道具であるジークが、パートナーである俺以外の人間に気を取られるなど。怒って当然の、ひどい行為だ!
やっとはっきりした。
だから怒りを覚えたんだな?
俺は勢いよく布団をめくり、中から堂々と顔を出した。
名分が出来た! よかった! ATフ●ールド、キャンセルだ!
「自分の愚かさが……わかったか?」
「わかったでござる! 殴っていいでござる! 踏んでもいいでござるよ! いや、思いっきり踏んでほしいでござる……! パリル殿の気が晴れるまで!」
「その必要はない、ザク……」
実際、誰かを殴るだけの気力もない。
俺は、跪いて必死に許しを請うザクを見下ろしながら、短くため息をついた。
要領が悪い。