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レンゲは呆然と床に座りこんでいた。
じっと虚空を见つめたまま、身动き一つしない。
「……」
レンゲの心はすでにここにはなかった。
ヒュウガもまたその场に立ちつくりたまま动こうとはりなかった。
「ガイ……」
シュラトはじっと锐い眼差しをガイに向けていた。
ガイはあの冷たい微笑を浮かべている。
やがて、堰を切ったようにシュラトの口から言叶がほとばしった。
「ガイ、なぜなんだ!?おまえ、あの手天岛での戦いのとき、わかってくれたはずだろう!なぜまた!」
「フフ……気づいたのだ。あれが愚かしい间违いだったことに……」
「ガイ!」
シュラトの必死の说得を嘲るように、ガイの冷笑は强くなる。
「シュラト、私は己のやるべきことに気がついたのだ。」
「なにっ?!」
「フ……シュラト、感じないか」
「えっ!?」
雷鸣が轰き、震动音が伝わる。
周围にすさんだ灭びの気配が忍び寄っていた。
「皆、すべてのものは灭んでいく……それが世のあるべき姿だとしたら!」
「えっ!?」
「存在そのものが世の不安定の要因だとしたら!すべての世界が灭びを待っているとしたら!」
「なにを言ってるんだ、ガイ!」
「私はそれを助けてやろうというのだ……」
ガイは狂气の笑みを浮かべ、叫んだ。
「私は正しいことをりているのだ!人は死なねばならぬ!物は壊れねばならぬ!世界は灭ばねばならぬ!」
「违う!」
シュラトも负けずに叫ぶ。
「みんな一生悬命、必死に生きようとしている!人や、动物や、草木や、そして世界そのものだって!灭びを愿っているなんて、そんなこと绝对にない!ガイ、おまえは间违っている!」
「フ……愚かな!ものの真実の姿が见えぬやつめ」
ガイはスラリと剣を抜いた。
「生きていく辛さから逃げれるには结局死しかないことになぜ気づかぬ!无に戻ることの悦びがなぜわからぬ!天空界はやがて黑のソ-マに覆われる……そう、灭ぶために。その前にシュラト、おまえだけは私の手で灭ぼしてやる!」
ガイは剣を构える。
Om vajra-tmakohan yaksa hum.
「死ねっ、シュラト!」
ガイの剣から悪しきソ-マがほとばしった。
ソ-マは暗の魔狼と変わり、シュラトに迫る。
「くうっ!」
その邪悪な力にシュラトは真正面から立ち向かっていた。
シュラトの意地であった。
己の正义をかけた—
「ガイッ!」
ガァァァァァッ!
だが、暗の力はシュラトの予想をはるかに上回っている。
「くっ……」
魔狼の颚がシュラトを喰い破ろうとしたまさにそのとき、横からヒュウガが飞びこんできた。
「シュラト!」
魔狼はヒュウガに激突し、雾散した。
だが、同时にヒュウガのシャクティも粉々碎け、身体が床に投げ出された。
「ヒュウガ!」
「クッ、大丈夫だ……それよりも、シュラト、ガイの言叶に耳を倾れるな!」
「……!」
「あいつの言っていることもある意味では正しい……だが、それこそが黑のソ-マのわななのだ……。インドラ様は生きることの辛さをオレたちに教えてくれた……けれど、それは灭びを勧めるためか!?违う!生きていくためにだ!」
「ヒュウガ……」
「シュラト……ガイがいる限り、ヴィシュヌ様は复活しない……强大な黑のソ-マが天空殿を覆っている限り……グッ……」
激痛のため、ヒュウガは気を失った。
シュラトはヒュウガを静かに横たえるとまわりを见た。
レンゲはいまだうつろな瞳でうずくまっている。
石化したヴィシュヌは暗黑のソ-マに覆われたまま复活のきざしを见せていない。
そして、そんなシュラトを见てガイは笑っていた。
シュラトは、ガイの冷笑の意味を瞬时に理解した。
「ガイ、おまえはヴィシュヌ様の复活を邪魔しているのか!?」
「そういうことだ、シュラト。一度は杀してしまおうと思ったが気が変わった……さて、どうする、シュラト!?ヴィシュヌの石化は私を杀さぬ限り解けぬ!」
「クッ……」
シュラトの心をガイはもてあそんでいた。
シュラトの立场をあざ笑っているのだ。
さらに追い打ちをかけるようにつぶやく。
「おまえは言っていたな、シュラト。私のことを友と……。どうする、シュラト、おまえはその友を杀すか!?」
「ガイッ!」
シュラトの心を怒りが支配していた。
「これがオレたちの宿命なのか!」
「フフフ……」
ガイがふたたび剣を构える。
シュラトも静かに三钴杵を构えた。
ピカッ…
稻妻があたりを照らす。
シュラトとガイの身体が光の中にシルエットとなって浮かび上がった。
「ハッ!」
「はあっ!」
ガイもシュラトも一气に走り出し、相手に打ちかかった。
「タァァァァァッ!」
ガイの剣は大きく空を斩る。
シュラトは巧みにそれをかわし、ガイの懐に飞びこんだ。
「ハッ!」
シュラトの三钴杵がガイのかみをかすめる。
ガイの剣が振り下ろされた。
ガシッ!
シュラトはそれを三钴杵で受け止める。
「クッ……」
「うっ…」
両者はタイミングを计り、いったん离れた。
そしてまた打ちかかる。
「はっ!」
「たああっ!」
剣がシュラトの身体を伤つけただけ、ガイの身体もなたシュラトの三钴杵の攻击を受けていた。
両者の间で、一进一退の攻防が缲り返される。
ガガガッ……
天空殿が震动し、床が大きく揺れ动く。
「むっ……」
ガイがわずかに足をとられた。
この机会をシュラトは逃さなかった。
「はっ!」
シュラトがソ-マ弾を左手で放ち、一气に前に出た。
「ぬっ」
ソ-マ弾をよけたガイに向かってシュラトが飞びこんでいく。
シュラトの三钴杵の突きがガイにきまるかに见えた。
しかし、
「なに!?」
ガイはその一击を素手で受け止めていたのだ。
そのまま膝でシュラトを蹴り飞ばす。
床に倒れこんだシュラトにガイは剣の一击を见舞っていた。
が、
「うおっ!」
次の瞬间、ガイの剣は床にころがっていた。
カウンタ-で、シュラトの三钴杵の一击がガイの手に决まったのだ。
ガイは手から血を流しながら、シュラトをにらみつけていた。
「おのれ、シュラト!」
両者はふたたび间合いを取った。